スキとキライを追いかけて

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スキとキライを追いかけて

 ぼくちんは猫である。  名前はついさっき“まる”に決まった。丸っこくてふわふわしていたかららしい。なんとも安直なネーミングである。 「動物飼うのなんか嫌だっつったじゃん。どうしても飼うなら犬にしろってのも聞いてねえし」  そしてそんなぼくちんの目の前にいるのは、ぼくちんを飼った鈴木家の長男である。  現在小学校六年生、らしい。上には中学生の姉もいる、らしい。  そのお姉ちゃんのほうはぼくちんのことをうざったいくらい可愛い可愛いとモフりまわしてくれたのに、弟の方は触る気配さえない。  まるで親の仇のごとくぼくちんのことを睨みつけている。 ――なんだよ。ぼくちん何かしたか?出会ったばかりだってのに冷たいなコイツ。  まあ、ぼくちんは猫なわけで。あんまりべたべたとなれなれしくされるのも好きではないのだが。だからといってこう、初見から超絶塩対応されるのも納得がいかないのである。 「ちょっと翔琉(かける)、そんな言い方ないでしょ!?この子が何したってのよ!」  お姉ちゃん、よく言った。でも頼むからそろそろ猫吸いはやめて貰えないだろうか。ふんふんふんふん、とさっきから鼻息がめちゃくちゃうるさいぞ。 「知るか。可愛いとか可愛いくねえとかそんな問題じゃねーんだよ!嫌だと言ったら嫌なんだ、ばーかばーか!」 「こっら!姉ちゃんに向かってなんて言いぐさだ!ぶっ飛ばすぞ!」 「悔しかったら捕まえてみろよー!」  小学生の弟はともかく、中学二年生の姉が同レベルで喧嘩するのはいかがなものなのか。追いかけっこを始めた姉弟を見て、ぼくちんは呆れてしまった。そんなことよりさっさとご飯が食べたい。 「反抗期じゃのー」  そんなリビングの窓際では、同居犬であり先輩犬である白柴、カンタロウが欠伸をしていた。今年十五歳になるおじいワンである。
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