スキとキライを追いかけて

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 ***  鈴木家の人達はいい人ばかりだ。ペットショップにいた時、ぼくちんのような黒白のマダラ猫は客たちに結構酷い言われようだった。模様の出方がかわいくないとか、変なところにハナクソがついているみたいで不細工だとか。で、結構長いこと売れ残ってしまっていたのを、あの一家(長男除く)が見に来て一目惚れ。結構大きな子猫になっていたぼくちんを買い取ってくれたというわけである。  やや愛情が重すぎるものの(特に姉。ことあるごとに捕まえて猫吸いしてくるのはマジでやめてほしい)、みんなぼくちんのことを可愛がってくれている。いい人、なのは家族のみならず先輩犬もだ。カンタロウは十五歳だけれど、まだまだ足腰もしっかりしていてお外に散歩に行けるおじいワンである。温厚な性格で、ぼくちんがうっかりしがみついても、寝ぼけてママと間違えておっぱいを吸っても怒らない。  それからいろんなことを教えてくれる。今でこそ落ち着いた性格だったカンタロウだが、昔は結構やんちゃ犬だったらしい。 「ああ、そのカーテンには触るなよ。猫にとっては登りたくなる魅力的な形状かもしれんが、さすがにそれを破いたりしたら母親のカミナリが落ちるでな」 「ええ、なんで?」 「前にカーテンがダメになったあとで買い換えたんじゃが、その時父と母の二人でえらく悩んどってのう。結局“かなりお高いけど、この花柄のやつが一番素敵だわ。これにしましょう!”と奮発して購入したんじゃ。どうしてもカーテン登りしたいなら寝室のやつにせえ。あっちは安物じゃ」 「了解!そっちで冒険する!」  まあこんな具合。彼は長いことこの家にいるだけあって、どこまでの悪戯なら許容範囲か、どれくらいやるとマジ切れされるのかをよくわかっているのだった。以前、よほどいろいろやらかした後であるらしい。本気でキレられると一週間ちゅーる抜きにされるぞ、と言われてしまえばぼくも黙るしかない。あの美味しいブツを一週間もナシにされるなど言語道断だ、ありえない。  さて、そんなぼくちんがいる鈴木家だが、一応は一戸建てである。そこまで広くはないが芝生の庭があり、ガレージもあるという構造。庭はぐるりと木の塀で覆われていて、庭までならばぼくちんもカンタロウも自由に出ていいことになっているのだった。
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