スキとキライを追いかけて

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 目の前にはちょっと大きな道路がある。お姉ちゃんも弟の翔琉も、この前の道路をまっすぐ渡って学校へ行っている。正確な場所は知らないが、同じ方向だということなのだろう。 「うっほーい!」  そんなぼくちんの最近のブームは、お母さんに貰ったオレンジ色のボールで遊ぶことである。大きさはボーリング球くらい(と、お父さんが言っていた)だが、とっても柔らかくて弾むのでぶつかっても怪我をする心配がないのだ。ボールを転がしたり、鼻先でつんつんとリフティングじみた真似をしてみたり。いつまでやっても飽きない、最高の遊び道具である。  猫は毛糸玉の方が好きだって聞いたのに、とお母さんは不思議がっていたが、ぼくちんからすればこっちの方がずっと面白いというものだ。爪を立ててしまっても割れないし、逆に爪が引っかかることもにない。本当に楽しい。 「家の中では、あんまりはしゃぎまわるんじゃないぞ。それと、翔琉殿が帰ってきたら大人しくしてるように」 「むー」  その日は外が雨だったため、外に出して貰えなかった。庭に出られる猫用の扉を窓につけてもらったが、それも今日は鍵をかけられてしまっている。ぼくちんは不満に思って、忠告してきたカンタロウを睨んだ。 「なんで、あのクソナマイキな弟クンにぼくちんが配慮しないといけないわけぇ?ぼくちんがなーんもしてないのに嫌ってきやがって。ご飯出してくれる時はあるけど、それも嫌々やってるーってかんじでさ。そんなに猫が嫌いなのかよ。このふわふわの魅惑ボディのどこに不満があるってんだ、あ?」 「自分で言うのかそれ……。……何か誤解があるようじゃの。翔琉殿は、猫が嫌いなわけでは断じてないぞ。猫アレルギーがあるわけでもない」 「ええ?じゃあなんで?」 「人間にはいろいろあるのだ、いろいろな。おぬしもそのうちわかるようになるとも」 「ええ、何それ?」  これだからジジイは、とぼくちんはんべっと舌を出したのだった。何か言いたいことがあるならはっきり言ってくれればいいものを!
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