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恋か愛か
ジューンは毎日ログハウスに顔を出すので、ブラックハウンドの本拠地に模型を届け、ジューンにだけ鍵のコインを作ってやった。
「この人とこの人とこの人がスパイです!レースン家はこれで全員見ました!」
そうジューンの仕事はスパイ探しだ。
テンの姿になりレースン家のペットとして潜り込み、屋敷中の人を見て回りスパイをあぶりだすのが仕事だ、この作戦結構うまく行っていてペットにまで警戒して隠蔽魔法をするものは居らず、素の状態のその人の出身地などを見る事、心の中を見ることができるのでどんどんスパイがあぶりだされた。
「計23人!!いやぁねぇこんなに潜り込んでたなんて」
ミライザの言葉にカトリアナも困ったように言う、
「騎士にメイドに従事に庭師からコック見習いまでよくも潜り込ませたものですわ」
ジューンの正確な絵姿と魔法写映機で撮った絵姿が貼られているプロフィールと参照しながらアクセラが言う
「まぁまだ検挙はできないしあと4週間でヤマナリアスとカタトリス、王宮はできそうかい?」
アクセラの質問にジューンは言う
「王宮にはすでにロバートにぃさんが入ってます、もう半分は見たと言っていますが後二週間であと二つの公爵家の偵察を終わらせて最後の一週間で王宮をロバートにぃさんと見ようと思います」
「わかった、よろしく頼む」
「お任せください」
パースの言葉にジューンは頭を下げる。
「ヤマナリアス家は大丈夫だよ、メイカ様が考えてくださったこのカラーグラスのおかげで、目を使っていることはバレていないから見放題だよぉ~、いやぁスパイ探してたら秘密の恋も見つけちゃって楽しいよねぇ!」
はっはっはと笑うワイヤークに何それぇと喜ぶカトリアナとミライザ、ちょっと脱線している隙にログハウス生活でピクシーや小鳥になつかれ、部屋の隅で可愛い事になっているメイレイの側にジューンが近づく、そしてグレートボックスから可愛いピンクの花を出す
「メイレイ様、今日もガーデニングをしていたのですか?」
ジューンの質問にメイレイは可愛がっていたアヒルから目を離し自分に花を向けるジューンに目を向ける
「あらジューン今日もお花をありがとう、今日、ちょうど貴方のくれた花を植え付けたのよ、上手く根付けばいいけれど、このお花は花瓶の方がよさそうね」
「毎日ここに居て飽きない?」
「ジューンがいつも知らないお花をくれるし、ピクシー達とお庭をお散歩するのも楽しいわ、ここではみんな私に良くしてくださるし、自然がいっぱいで、今日はリスやシカさんとも仲良くなれたわ」
楽しそうに話すメイレイにジューンは笑いかける、そして真剣な顔をする
「問題が片付いたら・・・どうするの?」
ジューンの言葉にメイレイは考える
「田舎の方で小さな喫茶店がしたいわ、ゆっくりケーキを焼いてみたり、今お茶を入れる練習とかお菓子を作る練習をパース様に付き合っていただいてるの、自由に何でもできるって素敵だわ、私、今人生で一番楽しいの」
輝くような笑顔で今を楽しむメイレイは本当に美しい、誰よりも
「ねぇそれ田舎じゃなきゃダメ?」
「え」
驚くメイレイにジューンは真剣に言う
「俺、鑑定伯になるよ、それでメイレイ様のカフェ手伝うし後援者になる、俺が成人したら結婚してよ!」
ジューンの言葉でメイレイは顔を赤くさせて周りを見て落ち着かない様子で、けど笑って言う
「ジューンこんなおばさんをからかわないで」「からかってない!」
「僕は本気だよ」
ジューンの真剣な様子に戸惑い、こんなに真っすぐ好意を向けられたのも初めてでどうすればいいのかわからない、思わずパース達を見れば大きな声だったから聴いていたらしく、にやにやと見守っている。
「いいんじゃないですかメイレイ様、ジューンは確実に人気な鑑定伯になりますよ」
「で、でも私は300を越えていて、ジューンは11歳だし・・・」
メイレイがそう言うとジューンは胸を張って言う
「若い方が長く貴方と居られます!だって僕は500くらいしか生きられないけど貴方は1000歳まで生きるでしょ?ほらちょうどいい」
ジューンの言葉にワイヤークがちゃちゃを入れる
「でもそれじゃメイレイ様を残して死ぬことになるぞ」
それにジューンは胸を張って言う
「大丈夫です僕は子供も欲しいので僕とメイレイ様の子供がメイレイ様を見ます」
パースが面白がって言う
「子供の作り方なんて知ってるのか?」
「知ってます!偵察でいっぱい見たので!」
ジューンが胸を張って言うのでアクセラは顔を真っ赤にさせて言う
「偵察で何見てるんだ!」
「使用人は主人に黙って睦合うものです」
「だれだ!!そんな破廉恥なことしてるやつらは!!!」
もう話はごちゃごちゃだアクセラは怒るしミライザは笑うし、ハチャメチャで楽しい空間に照れていたメイレイは何だか笑ってしまう、それを嬉しそうにジューンは見ているのだった。
一夜明け、城ではまだパースの捜索が続いている。
マリアが城を歩いていたらサラベルとアンディーとフィルトールと出会う、アンディーがマリアに気がつく
「あぁマリア、お疲れ、どこに行くんだ」
「剣の手入れが終わったらしいから取りに行く所よ」
「そうか、君の剣は美しいよな」
元気のないアンディーの言葉にフィルトールが言う
「工房の手入れだけじゃなく自分の手入れも丁寧な証拠だな」
フィルトールは笑って言うがやはり元気がない
「まだ見つからないの?」
なんとも白々しいと自分で思いながらマリアは3人に聞く
「あぁもう最悪の場合しか頭に浮かばないよ」
「やめろアンディーそんなわけないだろ!」
サラベルに叱咤され、ごめんと謝るアンディーは本当に悲しそうだ、この悲しみが嘘な事があるのだろうか、それでも話す事はできない
「アンディー、パストル皇太子殿下は強い方だわ、きっと大丈夫よ」
マリアの言葉にアンディーは真っすぐマリアを見る、その悲しそうな視線に口が滑りそうになる、喉の奥の方から漏れ出しそうな感覚を覚えた時、フィルトールが言う
「そうだよな!パース様は強い!元気出せアンディー!」
バシバシとアンディーの背を叩き、励ますフィルトール
「フィルトール乱暴すぎてアンディーが苦しそうだぞ」
バシバシ叩くフィルトールにサラベルがそう言うとフィルトールは「あ、わりぃ」とその手を止める、するとアンディーが笑う
「はは、お前も心配だから力加減わかんなくなったか?」
「へっへっへ、ついな」
「そうだよな、そうだな、パース様がミィカルに刺されたくらいじゃ死なないよな、ワニだって怖くないはずだ!そうだよな!」
「「ああ!」」
フィルトールに救われた。もう少しで口からこぼれそうだった。
マリアは苦笑いにならないように気を付けながら3人に笑いかけたのだった。
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