晩餐会

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晩餐会

「まぁ!メイカ様こちらの服も可愛いですわぁ!」 「きっとこちらも似合いますわ!」 キャッキャとはしゃぐ猫と鳥とウサギのメイド達、パースが同じ年頃の女性を付けてくれたのだが、全員でかい、170は優に超えていて、聞けば成人女性の平均身長は170cmで160cmでも小さい方で、小人病と言われるらしい、メイカの身長なら10歳でも小さく、27歳には到底見えないくらい小動物のようだと可愛がられる (そりゃ元の世界でも小人民族な日本人生まれは子供に見られるわな) しかも明香は、その中でもさらに小さい部類だ、今のように子供に着せ替えするように楽しまれるのは仕方ないだろうが、正直明香は疲れている、子供らしいフリフリからマシになっているとはいえ、淑女らしい服を着るにはやはり幼く見える明香は、長年避けてきたピンクや水色、黄色の可愛らしいドレスに次々着せ替えられて居るからだ、 そして ちらっと部屋の隅を見る、メイド達が一生懸命見ないようしていたが、今は明香の着せ替えで忘れられているパースがずっと明香の着替えを見ている (普通淑女の着替え見る男っているの!?この世界なら普通なの!?それとも私がペット枠だからか!?) 最初は恥ずかしくて追い出そうとしたが、何をしても何を言っても逆に喜ぶだけで諦めて気にしないようにしていたが、夫でもない男にほぼ服だろって感じの下着でも見られるのは恥ずかしいわけである (いや、別にタンクトップと短パンで出かけるの普通だったし、シュミーズとコルセットとかで恥ずかしがる必要は全く無いんだろうけど) 脱がされて次の服を準備されながらチラッとパースを見てさっと視点を戻す (怖いんだよあの獲物を狙う目!狩か!?狩りなのか!?もうちょっと肉ついたら食われる!?) 未だにドラゴンに抵抗感のある明香、神官から肉食獣は戦争で勝てば敗戦国の王や民を食べていた時代もあったと聞いた時には人間の絶滅理由がわかった気がした。 そしてドラゴンは最強種!肉食獣!と言うのはこちらでも変わらないようで (私非常食なんじゃ!?) と言う不安は拭えないのだった。 熱い視線に、肉付きの良い自分に凄く怒りが湧く、食べごろじゃん!?でも筋肉質だら赤身が多くて美味しくないと思います! なんて思いながら体をできるだけ引っ込めている 「メイカ様は、細いのにきちんと付くところに付いてらっしゃるから何を着てもお似合いになりますわぁ!」 キャッキャと白と水色のドレスを着せてくる 「そうそう、少し筋肉質ですが無駄なお肉がない感じですわよね!」 「見た目の割に成熟なさっていらっしゃるから27歳と言うのも納得ですわぁ」 キャッキャと楽しそうに話すメイドに苦笑いしながら悪寒を感じてパースを見るとニタァと笑っている (ひいいい!!余計なことを言わないでぇ!!!メニューが決まるううう!!) 泣きたいのを我慢しながらパースに引き攣った笑顔を返すとパースが柔らかく笑う (きょわい) 明香がパースに怯えるのとは裏腹にメイド達は二人を見て色めき立つ、 突然メイド達が違うテンションになるので驚く明香に、メイド達がフンッ!と鼻を鳴らす 「「「今夜の晩餐会!メイカ様を最高に仕上げますわ!」」」 「え?食われんの?」 突然のメイド達の意気込みに明香は泣きそうになる、 (嘘だろ、どうせならこの世界の建築物見たかったのに、パースの屋敷しか見てない) ショックを受けていると後ろから抱きしめられて顎を持たれ上を向けられる、そこにはパースの綺麗な顔がある 「食べても良いけどまだ時期じゃないからね、待ちきれないだろうけど、我慢してね」 パースの言葉にメイド達がキャーとテンションをあげる (やっぱり食われるんか) ひぃっと涙目になりながら苦笑いする 「いつまでも待てますのでお気遣いなく」 (できれば食い時期過ぎちゃってもぜんぜん良いです) 明香の言葉にパースはそれはそれは優しく笑うものだから、メイド達はもう燃え上がってアクセサリーなどを選んでいる 「良い子だね、他の人に触らせては駄目だよ」 「はい!」 (料理する時に料理人に触られますけどね!?) とりあえず、何しでかすかわからないパースを刺激しないように明香はニッコリと笑うのだった。 それがどんな誤解を産んでいるかなど知らずに (あれ?じぁ晩餐会ってなんだ?) 着替えさせられながら明香は首をかしげるのだった。 数時間後 黒い肩口の髪を三つ編みのハーフアップにして白地に金の縁取りのコサージュは真珠が朝露のように散らされていて ドレスは白に星を散りばめたように金のピーズが装飾されて、胸が強調されるように 胸元にギャザーが寄っているのに下品じゃない、明香の漆黒の髪と黒曜石のような目が強調されて美少女に見える (服と化粧ってすげぇ) まるで別人のような自分に困惑しながら明香は思う 「まぁ!メイカ様は天使様ですわ!」 「人間って天使様でしたの?この世の方とは思えません!」 「これで聖女と言われればみんな頷くしかありませんわ!」 キャーと自分達の最高傑作に大興奮のメイド達 「はは、言い過ぎですよ、三十路の聖女って、あ、三十路とか言わないのか」 聞けば獣人の平均寿命はバラバラで聖獣族が千の時を生きて、肉食獣は500年 鳥獣人が400、草食獣が一番人間に近い100歳、ここで聞いてほしい、平均寿命だ、 寿命の時点で人間負けてるじゃないですかと明香は遥か昔に絶滅した人間族を憂いたのだった。 「30なんて獣人じゃぁ若いのに人間は大変ですねぇ」 「どうにか寿命を伸ばす方法はないのかしら、」 「メイカ様が早く居なくなるなんて嫌ですわぁ」 ウルウルとした目で見てくるメイド達、 (気がはえぇ、とはいえ少なくともこの人達は食べようとは思ってないんだな) と少し安心する、そこに、ガチャっと誰かが入ってくる、見ると、貴族らしいと言うか王族と言ってもぜんぜん話が通りそうなパースが入ってくる 「準備はできたか・・・い・・」 明香を見て目を見開いて固まるパース (おお、これで平民上がりなんだ、どう見ても王子様なんだけど、粗暴な感じとかもないしなぁ変態だけど) 明香がパースを皇子と思えないのは数々の変態行為にある、皇子が湖に飛び込まないし殴ってくれとか言わないし、暴言吐かれて嬉しそうに顔をほころばせたりしないし、 淑女の着替えを凝視なんてするわけがない、 何より、メイド達が皇帝と皇后は優しく、第二皇子は優しいがポワポワしていて頼りなく、正反対に皇太子は、冷徹人間で全然笑わず、任務で粗相をした兵士をその場で自分の手で斬首するらしい、 それを思い出してパースを見る、何故か顔を赤らめ朗らかに笑うパース (あっても第二皇子か?でもポヤポヤはしてないよな、でもめっちゃ笑うしなぁ) うーん?と思いながら、こんなのが皇帝になったら帝国潰れるから公爵なんだろうなと結論付けた。 「綺麗だメイカ、夜空の星に攫われてしまいそうだ」 あまりに臭いセリフにブルっと震えて乾いた笑いをする明香 「あ、ありがとうございます、パース様」 できるだけ気持ちを表に出さないように明香は、笑った。 それを見たパースは、慈しむような優しい笑顔をする パタパタと倒れるメイド達 (うわぁ、イケメンの悩殺スマイルってこれか) ちょっとドキドキして、パッと直輝(なおき)を思い出す、最後に見たのが必死な顔だったなんて、もうすぐ結婚も近かった。そう考えるとこのドレスがウェディングドレスのようでそして別の男の隣に並んでいる (直輝) 少し暗い顔をする明香にパースは勘違いをする 「晩餐会は初めてだろう、緊張するだろうが私に任せなさい、メイカは何もしなくていい、ただ私の側にいなさい、いいね?」 パースに心配されて、もう、元の世界には戻れ無いだろうと言うことを思い出し、悲しい思いを隠して笑う 「はい」 その明香の笑顔にパースは満足そうに頷いて明香抱える 「え?!」 「メイカは、小さいから抱えたほうが歩きやすいよ」 そう言われて明香は諦める、そうですね、平均身長190で、パースは2m近い、手を引いて歩くなんてパースの腰が痛いだろう、 (ペットだしな) そんな事を思った明香は、晩餐会会場に向かう 明香は晩餐会という言葉を忘れていた。 ただの小さな食事会では無いということを 明香は、パースに抱かれたまま廊下を歩く フワッと何かの気を感じたと思ったらパースの耳が人間に近いけど尖った耳になっている 「耳を変えるんですか?」 「普通の人に僕の魔力は強すぎるからね、本体に近いほど溢れる魔力は大きくなるから明香も訓練頑張ろうね」 「訓練?」 「こう・・・・公爵様!お待ちしておりました!」 慌てる声を見ると絢爛豪華な扉の前、そこに居た鹿の角を持っている獣人が焦る (何焦ってんだ?平民上がりでも馬鹿にしてないんだな、本当に力重視の爵位制度なのか、あるいは・・・・) 兵士が扉をあけて従事が高らかに声をあげる 「パース公爵閣下と人間のメイカ・サトウ様のごにゅーじょーー!!!」 (貴族として恐ろしい存在の場合) 入った瞬間、入り口にも聞こえていた話し声は静かになる、そしてみんなこっちを見て、まるで恐ろしい物でも見るような目をする (マッジかぁ、もしかして悪役公爵とかじゃないよね!?) ギギギと、できる限りの笑顔でパースを見ると、冷えた顔からフワッと花のようにうっとりと嬉しそうに笑うパース キャーと悲鳴が聞こえた気がした。 (やばいやつに拾われたかもしれん) にこぉっとパースを刺激しないように明香は笑う 棟梁の奥さんの話を思い出す 「いい、もしも、貴方でも敵わないくらい力が強い人に出会ったのならば、刺激しないように笑いなさい、貴方の笑顔は、みんなを幸せにするわ」 (奥さん、ありがとう、何とかなりそうです) 実の親にも化物と言われて不良に走った明香を更正させて居場所与えてくれた人を思い出して、明香は、はにかむ ほぉ、と大きなため息が聞こえたと思ったらカポッと顔に何かをつけられる 仮面のようだ 「そう言うのは部屋だけにしなさい」 「?どういうのですか?」 パースの言葉に首を傾げるとパースは楽しそうに笑う 「無意識か、君はそのままでいなさい」 「?????」 明香が疑問に思っていると、パースは、フッと笑って会場に入って行く (何故こんなに自慢げに歩いてんだ、見せ物じゃねぇぞこんにゃろう) 伝説の生き物である人間で小人ほど小さいと、されているので、今はさながらパンダの気分である 周りの貴族は、コソコソと話していて、悪いのも良いのも見える (なんか知ってる貴族らしいなぁ、もしかして貴族階級制度意識が強いやつもいる?) ハッと気がついて周りを見る きゃっきゃと騒ぐのは若い女性貴婦人ばかりで、お年の召した貴婦人らしき人や貴族の男共は難しい顔や悔しい顔、派手な格好の下卑た笑いをしている物もいる 明らかに平民上がりの自分達を歓迎しているようには見えない (なんか、この人、よく公爵になれたな、皇帝無理を押しすぎでしょ) 呆れて王座の方を見る、初めて皇帝を見る 精悍な顔でドラゴンの尖った耳をした黒髪のエメラルドの目を持った壮年の男性と物腰柔らかそうな燃えるような赤毛と海のような青い目の尖った耳の朗らかな女性がこっちを見てとても、それはとても生温かい目をしている (え?王族そんな目するん?) いくら自分がパンダレベルで可愛がられてる珍獣であっても貴族達の前でその顔はいいんだろうか (あれ?) 皇子2人も見ようと思ったのに皇后の隣は空席で、皇帝の隣にはなんか豪華な神官が居る (皇太子は参加しないの?こういう場が嫌いとか?) 首をかしげていると、王族から近い席にパースが座る、王族並みに人に見られる席だ (いやん、さすが公爵様、授かりでもこんな位置に座れるなんて!1席しか空いてない!) ふふ、と現実逃避しながら会場を見る、婦人達が鋭い目つきで見ている (調理される前に視線で死ぬ、誰か椅子持ってきて) パースは、明香を抱いたまま座って膝の上に明香を置く 気分だけなら1週間前から吐血ばかりしている気がするなぁ、と思う明香 横を見ると尖った耳の金髪の男と丸いライオンのような耳の黄褐色の毛の女が居る ふと、皇后の方から視線を感じて空席の隣の席に朗らかな顔の赤毛の青年が見える、皇后によく似ている青年はエメラルドの目を細めて笑い明香を見ていたようで、ヘラっとしてヒラヒラと手を振ってくる (第二皇子かな?皇太子は、居ないのか) 明香が愛想笑いで振り返そうとしたら手を掴まれる 「メイカ」 パースに呼ばれてパースの方を見ると少し不機嫌にメイカを見る 「私だけ見てなさい、いいね」 「ひゃい、」 (視線に殺される方が平和的な死に方だろうか) 短い寿命がどんどん減っていく気分だ 明香の反応に満足したパースは、明香の髪を撫でて1房手に取りキスを落とす (これあれだ、ペットの前でデレデレになるタイプの堅物、人前じゃなきゃ何時もみたいに頭にいっぱいキスされる、まじ、ペットなんだな私) 明香は人らしい生は諦めんとな、とふっと息を付いたのだった。 ズキズキと視線を背中に感じる、チラッと見れば感じ悪く話す貴族が見える 見た事ある目だ 怪力女、化物女、貧乏人、ハズレくじ、捨て子、 今でも聞こえる、棟梁夫婦に拾われる前の声 パンダになっても一緒か 諦めることなら天下一品だ。諦めて生きてきた。 実の家族の愛も、受け入れられる事も、大事にしてくれる棟梁と奥さんが居れば棟梁の息子に嫌がらせされても平気だった。 どんなに女のくせにと言われても誰かの信頼とか期待とか気にせずに生きてても仕事に打ち込んだから職人として認められた。 そして直輝が受け入れてくれた。何をしても気にしない直輝、それだけで良かった。 昔はそれで幸せだった。 そうやって生きてきたんだ。貴族のこんな視線なんて、なんてことは無い むしろ、聞こえないように言うだけ可愛い方だ コソコソとこっちを見て話す貴族達を見て微笑めば、固まって、罰が悪そうに座り直す (ふむ、笑顔って武器だな) こちらを見ないようにしている貴族を見て居ると顔を掴まれてパースの方に顔を向けられる 「私だけ見ていなさいと言っただろ」 「パース様の顔はいつでも見れます、初めての晩餐会なのでいろいろみたいです」 明香の発言にパースは、目をぱちくりとさせて笑う 「クククッ、それもそうだな、楽しみなさい、でも笑顔を振りまく必要はないよ、そんな価値もない人間しか居ないからね」 「はーい」 (それ王族も居るんですけど大丈夫?) どうせこの世界で生きていかなきゃいけないわけだし、死ぬ時は死ぬわけだし、 今はペット扱いされてるなら言う事ばかり聞いて飽きられた方が問題だろう、殴れとか罵倒しろとか変態だけどそれで食べられるわけでも無いので、好きな様にしようと思うことにした。 プーとラッパの大きな音がする皇帝が立ち上がる 「今日は聖女披露の宴に来てくれてありがとう」 (聖女披露?そんな大事な日だったんだ) ふーんと皇帝を見ていると皇帝がパースの方に手を向ける 「今、【パース公爵】が連れているのが、白亜の女神の日に女神イルミナスの湖に落ちて来た人間の聖女様だ」 (へぇ白亜のドラゴンって女神なんだ、へぇ、女神の日に、へぇ、は?) ピシッと明香は固まる、 何て? 皇帝の隣の豪華な格好をした神官ぽい若い男性が立ち上がる 「教皇聖下からのお言葉です!」 皇帝の後に居る従事が叫ぶ (教皇出てきた!?) 「人間様は第一皇太子、パストル・レースン・ドラコニア殿下よりも魔力をお持ちです」 (何て!?) 「今それを示していただきましょう」 教皇がそう言うといつの間にか後ろに居た神官に台座に置かれた水晶を渡される 「メイカ様、水晶に触れて見てくださいませ」 明香は恐る恐るパースを見る 「触ってご覧」 優しく笑うパース、触ったらなんだというのか (えーい!ままよ!) 明香が台座に置かれた水晶を触ると淡く光を出して虹色に光ってその光はどんどん大きくなって行く (なにこれ・・・手が!離れない!) 手を離そうとしても体が動かない、そして水晶はピキッと言う音が聞こえたかと思ったらパリンっと真っ二つに割れて中から真っ白なドラゴンが出てきた。 『おかえりなさい、私の愛子』 ドラゴンは明香に顔を近づけてその言葉だけ残して消えた。 そして、会場は、ワッと熱気に溢れた声が響く 聖女様万歳と言う声がいくつも聞こえる 「これで証明されたでしょう!メイカ様なら必ず精霊の祝福を受けるでしょう!明香様が聖女になる事に異議のある方は居ますか?」 教皇の言葉に不平不満の代わりに盛大な拍手が響く 「ありがとうございます、では聖女様のお力がきちんと扱えるようになるまで2ヶ月の猶予をいただき、2ヶ月後、正式な聖女任命式を行いたいと思います」 教皇の言葉に賛賞の言葉が送られる中、 メイカは今見たドラゴンで頭がいっぱいになる 「パース様、水晶が割れたら何かが出てくるんですか?」 明香の言葉にパースは、わからないというような顔をする 「水晶が割れること自体初めてだからね、そんな事はないはずだが、何か見たのか?」 (パース様も見てないってことは、私にだけ?) 明香が考えていると教皇が立ち上がって興奮しながら言う 「異議はないという事に喜びを感じます、白亜のドラゴン様のもたらしてくださった彼女の魔力は国に繁栄を与え、栄光の未来を約束してくれるでしょう」 (いやぁああああ!1ペットに何を!?) 「聖女様を称えましょう、聖女様万歳!」 教皇がそう言うと会場が盛り上がり、大きな拍手が明香に向けられる ゆっくりパースを見る 「皇太子の時は虹色に輝くだけだったんだけどメイカは凄いね、クククッ、あ、でももうメイカを独り占めできなくなるのかな?困ったな、ククッ」 「笑い事じゃない!!」 真っ赤になって明香は、ポコっとパースを殴ってから 流石に体を小さく丸めて貴族から隠れようとする その行動にパースは、笑って明香を隠すように抱き上げる 「グエッ」 「皇帝陛下、教皇聖下、聖女様は初めての晩餐会に、疲れてしまわれたようです、無礼とは存じますが、この場を先に去ることをお許しください」 「パース様!?」 明香も驚くが周りもポカーンとした顔をする、が、皇帝は豪快にわらってから許しをくれた。 「お前が許しをこうとはな、許そう!下がりなさい、聖女様のお体を十分に労るように!」 「お許し頂きありがとうございます、失礼します」 パースは、挨拶もそこそこに、席の裏にある扉から廊下に出た。 皇帝は、パースを特別視し過ぎじゃねぇか!?と思いながらも、晒し上げから開放されて、ホッと明香は、息をついた。 「疲れた?」 「少し」 「なら休もうか、食事はしばらくしてから用意させよう」 と、言いながらパースは自分の部屋に行こうとする 「私に当てられた部屋が良いんですけど」 (最近めっちゃ連れ込まれる、ペット扱いとは言え、婚約者意外と寝るのはなぁ) 明香の言葉にパースはニコっと笑う 「ダメだよ今日は僕の機嫌がいいからね」 (なしてや) これは何を言っても駄目なので泣きながら頷く (あれ?) 明香は気がつく、普通の公爵邸で主催席に王族が?そして聖女のお披露目は重大事項なのに城じゃなくて公爵低?たとえ簡易的であっても重要な貴族は必ず来るだろう 何より聖女とか重要人物をいくら王が贔屓している公爵だからって城以外の屋敷で保護するか? 「パース様はなぜお城に住まわれているのですか?あと、爵位をもらう時にファミリーネーム貰わなかったんですか?」 ベットに明香を下ろすパースに聞いてからパースが少し固まる 「なぜここが城だと?」 「私の知ってる晩餐会なら主催席に公爵様が座っているはずですけど、主催席には皇帝陛下と皇后陛下、そして、主賓席に教皇聖下が座っていましたから」 明香の言葉に驚いた顔をしてパースが固まる、そしてクスクスと笑い出す! 「私は平民上がりだろう」 「そうですね」 (私って言った) パースは個人的な時は僕で、貴族とか政治家の前なんかは私だ 今まで連れ回されて少しはわかってきた。 だが今は、二人っきりだ、なぜ、私なのか 「私は皇帝のご厚意で爵位を頂いたけど、他の貴族がそれを許さないから、1代限りの公爵家なんだ、だから屋敷もないしファミリーネームも頂かなかった。それが貴族派の反感を少しでも抑える手だったんだ」 「なるほど、力重視の貴族制だと思ってたんですけど、やっぱり私が知ってる貴族制とあまり変わらいんですね」 なるほど、と明香は納得し、つまり、妙に作りがいい上にでかいここは帝国の城と言うことだ。 (バッキンガムとかベルサイユとか似にてるなとは思ったけど王宮だったかぁ) 王宮と言えばその国の最高峰の建築様式を用いて常に管理されているはずだ 建築様式としてはバロック様式とゴシック様式を混ぜたような建築だ、そうなると、ドレスの感じも中世ヨーロッパのローブ・ア・ラ・フランセーズによく似ている まぁ、THE異世界の定番だなぁ男の服もロココ調のアビ・ア・ラ・フランセーズ に似ている、刺繍などの装飾は派手なのだが、違う点は体型がしっかりわかる、洗礼されたフォルムと言うところだろうか、と言う事は中世ヨーロッパの生活を考えれば少しは順応できそうだ 考え込んでいると仮面を外されて手を握られ、パースが膝まついて明香を見る 「明香の国には貴族制度も無いし、平民じゃなかったのかい?社交界に詳しそうだね」 パースの言葉に1度考える、 (そうか、階級は知ってても平民は、晩餐会の席とか知らないか) パースの疑惑の顔に納得してどう説明しようかと思いながらも口を開く 「平民なんですけど、建築物に興味があって、いろんな国の建築調べてて、特にヨーロッパって言う地方の建築を調べてたら、ヨーロッパの貴族文化とか王権制度とか気になって調べてたので、ある程度の知識はありますよ、後はそう言うのを題材にした物語とかを見るのも好きだったので、なんとなくこう言う雰囲気と言う認識は持ってます」 明香の話にフワッと愛おしそうに笑うパース 「メイカは、勉強熱心なんだね、どんどん君に惹かれていくよ」 そう言ってパースは、立ち上がってメイカの額にキスをする 「!!!」 思わず明香はパシーンとパースの頬を叩いてしまう 「あ!ご、ごめんなさい!」 慌てる明香と違ってパースは嬉しそうに楽しそうに笑う 「本当にその顔は可愛いなぁ、今すぐ食べてしまいたいよ」 「ピェ」 (私のバカぁ!!!) 明香が青い顔をしているとパースが明香の頭を撫でる 笑って薄くなっている目が (きょわい) 殺るんならさっさと殺って欲しいと思いながらもハッ!と気がつく 「私!聖女らしいです!」 「それが?」 ニッコリ笑うパース 汗を垂らしながら笑顔で顔を固める明香 (それが!?!?) そこにコンコン、と扉を叩く音が聞こえる 「パース様、皇帝陛下と教皇聖下がお呼びです」 「チッ」 盛大に舌打ちをするパースの顔は鋭い凍てついた目をしていて、視線だけで今、扉の前に立っているであろう従者を殺していそうだ。 パースはため息をついた後に明香の頭を撫でていた手で明香の顔をなぞって顎を持ち上げる 「僕はまた晩餐会に戻るけど、メイカはここで食事をとるといいよ、メイド達に持って来させるから、眠たければ先に寝ててもいいよ」 「はい」 (皇帝陛下、教皇聖下!ありがとうございます!パース様帰ってこなくていいよ!) 取り繕うように笑えば、パースは嬉しそうに笑って、また額にキスをしてから離れて部屋の外に出た。 「恥ずかしさより、死の恐怖が勝ったわ、怖ぁ」 明香は、そそくさと部屋の出口を開ける、すると、扉の前には狼の獣人のアンディーと魚人族のシャチであるフィルトールと言う騎士が立っている 「おや?明香様どうされました?」 アンディーが明香に気がついて聞く 「お部屋に戻っちゃ・・・・・」 「駄目ですね・・・・・・」 「ですよねぇ・・・・・」 ガクッと肩を落とす明香に憐憫(れんび)の目を向ける二人 「メイカ様、まだパース様が怖いんですか?」 フィルトールの言葉にコクコクと頷き体を震わせる明香 「だって、ちょいちょい食べたいって言われるんですよ?さっきも呼びに来た人を視線で殺せそうな顔してましたし、死ぬなら寿命で死にたい」 青い顔をする明香を見て、騎士二人は晩餐会の会場の方に哀れみの目を向ける (食べたいとか言っちゃだめだって言ったのに)(メイカ様に本性バレちゃだめって自分で言ってたくせに、何してんですかパストル殿下!) とりあえずアンディーは、誤解を解かないと首が飛ぶと思い、明香をなだめることにした。 「別に本当に食べるわけじゃないと思いますよ?比喩的な表現といいますか」 「?食事以外で食べる?」 キョトンとする明香にマジか、とアンディーは焦る 「メイカ様、男性とのお付き合い経験は?」 「?27年間で一人ですね」 「キスとかしたことあります?」 「おい、アンディー!」 明香に変なことを聞くなとフィルトールが諌める 「実は婚約者はいたんですけど、キスから進んだことはなくて」 その明香の発言に二人はびっくりする 「「婚約者が居たんですか!?」」 二人の声に明香はびっくりする 「まぁ、結婚適齢期ですからそれなりに、でも貴族とかなら10代から婚約者が居るんじなないですか?」 明香の言葉にハッとした二人は姿勢を正す 「そ、そうですね、おかしい事ではないですね!」 「じぁメイカ様は婚約者様と離されたということに?」 フィルトールの心配そうな顔に明香は二カッと笑った。 「ん?あぁ、良いんですよ、幸せだっかなんてわからないですし」 「?それはどういう「メイカ様ぁ!」 アンディーが聞こうとしたら明香のメイドである猫の獣人が食事を持って現れた。 「あ!メイミー!ありがとう!めっちゃうまそう!」 「はぃい♡さぁ、冷めてしまう前に食べましょうメイカ様!後でミィカルとフレデリカもお着替えを持って来ますわぁ!」 メイミーは、嬉しそうに明香に言いながら中に促す 「うん!ありがとう!、あ、アンディーさんフィルトールさんお話し相手ありがとうね!おやすみ!見張り頑張って!」 そう言って明香とメイミーは、部屋に入っていった。 「アンディーこれは他言無用だ」 「わかってるぜフィルトール、バレたら」 「「国が終わる」」 フィルトールと、アンディーは思わぬ爆弾を背負ったのだった。
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