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* * *
「あー、三野っち。お疲れさま。委員会、遅かったね」
「お待たせ。なんか、開始が遅くってさ。災難だったよ」
「そうなんだ。でもなんかその割に顔、嬉しそうだけど?」
「え! そ、そうかな?」
「それよりさ、三野っちコレ見てよ。なんか二重にする画期的テープだって。一時期探してたでしょ?」
「あー、ホントだ。すごいね。着けてるの全然わかんない。でも……今はいいかな」
「おやおや? どうした? 三野っち」
「ははーん。これは何かあったと見たね」
「となれば……やっぱり柳か!」
「な、なんで?!」
「「それは、だってね〜」」
打ち合わせでもしたかのような口調の揃い具合に私はドキッとした。
どうやら気づいていなかったのは私だけのようで……。
自分のコンプレックスを好きになるにはまだ道のりは長い。この先そうなる保証だってない。
だけど、コンプレックスを抱える私を好きだと言ってくれる人がいたことに救われたのは本当だった。
必要以上に過小評価して貶めていたのは他の誰でもない私自身で、そのことに気づかせてくれた柳くんに私は心を動かさずにはいられなかった。
伝えたい感謝はうまく言葉にすることができなかったけど、まずは友達として仲良くしてほしいと言う彼から私は目が離せなかった。
「三野さん、やっと俺の顔見て話してくれた」
そんな嬉しそうな顔をする、憧れの柳くん。
友達としていられる時間は思いの外短いかもしれない……なんて思ってしまったのはここだけの話。
(終)
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