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約束
「やあ、また会えたね」
「君は……、まさか……」
「そう。あの時の僕だよ」
「どうしてここに? だって、君は、もう……」
「うん。そのとおり。僕は一度、この世界から消えた」
「なのに、どうしてここに?」
「どうしても、どうしても君に会いたくて。壁を、壊して来たんだ。この世界とあっちの世界を隔ててる、分厚い壁を」
「……そうだったのか。けれど、どうして君はそこまでして、僕のもとへとやって来たんだい?」
「うーん、やっぱり、心残りだからかな。……だって、約束したじゃん」
「……うん」
「けど、最後までやり通すことができなかった……。約束を、果たせなかったから……」
「……そのために、わざわざこちらの世界へやって来たのかい? 壁を、壊したって言ってたけど、そんなことをしたら、君は罰を受けることになるんじゃないか?」
「ああ。きっとそうだろう。けれど、そんなことはもうどうでもいいんだ。どうしても、どうしても、君に会いに来たかったから。さあ、今こそ、約束を果たそう。本当に、僕が世界から消えてしまう前に……」
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