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俺が断ると今度は悲しそうな顔に変わったので、顔うるさいなとツッコミそうになってしまった。
「……だめか」
「当たり前だろう。だいたい俺フェロモンなんか出てないじゃないか」
「フェロモンがないからいいんだ。俺はお前の体臭に惚れた」
「もっと嫌だよっ、やめてくれ」
背中にゾワっとしたものが走って、俺は慌てて手を振り払った。
もう自分のベッドとかどうでもいいから、身の危険を感じて後ろに下がることにした。
「わ、悪いけど、俺、女の子が好きなんだ。そっちに目覚めるつもりはない」
本音を言うと女の子と恋愛もしたことがなかったが、これくらいキッパリ宣言しないと分からなそうな相手だと察知した。
案の定というか、リザベルトはムッとした顔で納得できなそうに息を吐いた。
「分かった。じゃあ、同室なんだし、友人として仲良くして欲しい」
正直こんな変態臭のする大男と二人きりなんてごめんだと思ったが、今から部屋替えは申請が通らないからとラリックが言っていたのを思い出した。
冷静な判断ができないのだが、相手は偉人の末裔様だ。学校に文句を言ったとしても相手にされないだろうし、これからの学校生活が気まずくなると判断した。
「友人……なら、いいけど。とりあえず、ベッドは返してくれ」
そう言うと眉を八の字に曲げたリザベルトは、名残惜しそうにベッドから立ち上がって離れた。
「クッションもだ」
「ううっ……これだけは……」
「アホっ! 返せっ」
クッションを持って行こうとするリザベルトに、怒りを通り越して呆れてしまった。
こんな男と仲良くなんてなれるはずがない。
そう思った最悪の出会いだった。
「セイジュ」
「ん?」
「授業のレポート、まとめてデータを送った」
「え? マジ!!」
授業終了のベルが鳴り、帰りの支度をしていたらリザベルトに肩を叩かれた。
すぐにモニターを表示させて、ボックス内をチェックしたら、言われていた通りのレポートが入っていて飛び上がって喜びそうになった。
「助かるよー。宇宙学のアーロンって、めちゃくちゃ厳しいからさ。やっぱり持つべきものは優しい友人だな。ありがとう」
そう言って笑いかけると、リザベルトは頬を染めて照れた顔で頭をかいた。
その反応にやや引いてしまうが、背に腹はかえられない。
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