匂い惚れから始まる愛され生活は……(前編)

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 アルファばかりのこの学校で、自宅学習しかしてこなかった俺は早速教師に目をつけられた。  難しい問題ばかり当てられて、できないとレポートを課せられて泣きたい日々を送っていたのだ。  今までラリックのおかげで何とか形にしていたが、それでも睡眠や食事を削ってやらなければ間に合わなかった。  しかしリザベルトのおかげで全ての問題が解決しつつあった。  レポートを分かりやすくまとめてくれるので、もう感謝しかない。  これで俺のゆったりした食事と安眠は確保された。  始めは変態の大男なんて最悪だと思っていたのに、友人としてのリザベルトは最高に頼りになるやつだった。  レポートをやらせるなんてどうかと思うが、リザベルトから俺がまとめるからと言ってきてくれた。  親切の裏で何かありそうだとは思ったが、アルファの優秀さは確かなものなので、ありがたくお願いすることにした。  それにもう一つありがたいことがあった。  アルファ界のサラブレッド、軍神か帝王の血を引いているようなこの男のことを、みんな恐れているのだ。  彼らに言わせるとフェロモンのせいらしいのだが、ひとたび廊下を歩くだけで、人々が怯えた顔になってサッと避けていくし、リザベルトといるだけで誰も近寄ってこないのだ。  これは揉みくちゃにされて困っていた、俺の学生生活の一筋の光となった。  好意を利用することに些か罪悪感はあるが、リザベルトが来てくれたことで、今までにないくらい穏やかに勉学に集中できていた。 「やぁ、ランチは食堂? 俺も一緒にいいかな?」  リザベルトを用心棒のように従えて廊下を歩いていたら、声をかけられた。  振り向くとラリックが片手を上げて立っていた。  こんな風にリザベルトと歩いていて、声をかけてくるのはラリックくらいだ。  よく聞くとラリックとリザベルトは幼馴染というやつらしい。  お互いのフェロモンにも慣れているのか、二人は普通に仲のいい友人同士という感じだった。 「もちろん。一緒に食べよう」  俺が明るく返事をすると、ラリックは自然に俺の横に付いて歩き出したが、今まで後ろにいたくせに、ぐいぐいとリザベルトが前に出てきて、真ん中の位置に着いた。  仲間はずれにされたのかと思ったのかもしれない。仏頂面は相変わらずだが、少し焦った様子に見えて、それが可愛いなと思ってしまった。
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