匂い惚れから始まる愛され生活は……(前編)

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「セイジュ? どうしたの?」 「あ、いっ……いや、なんでもない。ちょっと疲れたなって」 「ああ、アーロンのこと? 本当に性格悪いよな。毎回しつこく当ててきてさ」 「まぁ、しょうがないよ。みんな優秀だからさ、俺がちゃんとしないとクラスの評価落ちることなるし」 「そんなことを言って……セイジュは誰よりも頑張り屋さんだよ。適当にやってるヤツなんかより、しっかり解けてるし、点数もいいじゃないか」 「そう言ってくれると助かる」  ラリックと話している間も、真ん中にいるくせにリザベルトは会話に入ってこなかった。  そもそもリザベルトはあまり喋るタイプではなく、教室では寡黙な方だった。  何を頑張って真ん中にいるのかよく分からないが、一人だけ無言なのが気になって声をかけることにした。 「リザベルト」 「ん? なんだ?」 「昨日、寝言がうるさかったよ」 「ううっ……悪い、熟睡して記憶が……」 「何の夢見ているのか知らないけど、セイジュそこはダメって、どこのことなんだ?」  完全に破顔したリザベルトは、真っ赤になってアワアワと口を動かしていた。 「お前ーー、変な夢見ていたら、怒るからな」 「わ……分かっている。そんなんじゃない。確か、二人で掃除をしている夢だった。掃いている場所が違ったから注意したというくだりだった」 「ふーーーん」  初対面で俺に告白してきたリザベルトは、友人だと言ったのに、諦めきれない態度を滲ませながら俺のことを見てくる。  俺も俺で利用させてもらっているのだが、ちょっと突いてみると動揺するリザベルトが面白くてついついイジワルをしてしまう。  そんな俺とリザベルトの様子を見て、ラリックはぷっと噴き出して笑った。 「ごめんごめん、やっぱり二人は仲良くなる気がしてたけど、当たったなって……」 「仲良くって……別に普通だよ」 「いやいやいや、セイジュは前のリザベルトを知らないんだよ。ずっと手負いの獣みたいでさ。怒りのフェロモン撒き散らして、誰も近寄れないし、俺だって声かけるの躊躇うくらい激こわって感じだったんだよ」  いつの間にか反対側に回って、ラリックは俺に小声で話しかけてきた。  端になったリザベルトはムッとした顔をしていたが、会話に入れないので口を尖らせて下を向いた。
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