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すると誰だか分からないが、ドンっと肩をぶつけられて転びそうになった。
思わず近くの机に掴まって堪えたが、何が起きたのか分からなかった。
クスクスという笑い声が周りから聞こえてきて、そこがC組の生徒の溜まり場だということに気がついた。
やはりそうだったと、俺はやっと気がついた。
アルファの生徒達には予想外に歓迎されたが、それが余計にオメガの生徒達からの反感を買っているようだ。
みんなのアイドルである、ベリーちゃんに声をかけたのも、その一つに入っているかもしれないと思った。
最近一人になると、足を引っ掛けられたり、背中を叩かれたりしたので、何か嫌な予感がしていたのだ。
平穏な学生生活が送れると思ったのに、俺は頭痛がして大きくため息をついた。
「セイジュ? どうした?」
動けなくなって座り込んでいたら、力強い足音が聞こえてきて、顔を上げるとリザベルトが立っていた。
すぐに横に座り込んで、心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「……いや、なんでもない。ちょっと気分が悪くなって……」
誰にやられたかも分からないし、もしかしたらただ当たっただけかもしれない。
喧嘩とか揉め事とか大の苦手な俺は、騒ぎを大きくしたくなかった。
リザベルトを巻き込んだら確実に事態は大きくなって、それでなくとも頼ってばかりのリザベルトにもっと迷惑をかけてしまう。
いくら何でも、それは申し訳なかった。
自分さえ我慢すれば……
俺が無理やり作った笑顔を見て、リザベルトは俺の腕を掴んでそのまま抱き上げてしまった。
周囲からキャーっと悲鳴のような声が上がった。
「リザベルト……なっ、何を……」
「黙っていろ。気分が悪いんだろう。保健室まで連れて行ってやる」
「え、うわっ、あっちょ……ちょっと」
リザベルトは俺をお姫様抱っこの状態でズンズン歩き始めた。
周囲から視線を浴びてしまい、恥ずかしすぎて俺は手で顔を覆った。
「リザベルト、いいって、大丈夫だよ」
「顔色が悪い。いつも見ているんだ。よく分かる」
「でも……」
「俺がこうしたいんだ。じっとしててくれ。セイジュの力になりたい」
指の隙間から見えたリザベルトの瞳は、真剣でどこまでも澄んでいた。
それを見たら、動いたわけでもないのに胸が高鳴っていくのを感じた。
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