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愛され生活はまだこれから…(後編)
「本当に大丈夫? 誰かにいじめられたりしていない?」
「大丈夫だって。平和だし、上手くやっているよ」
「そう……それならいいけど。困ったことがあったら言ってね。すぐに飛んでいくから」
モニター越しだが、心配していますというミラの視線を感じて、俺は安心させるように笑った。
夕食後、寮の自室でベッドに寝転びながら、久々にミラに連絡をした。
お互いの近況を話して、元気なことを伝えた。
「大丈夫、友達もできたし。クラスのみんなも驚くくらい良くしてくれるよ」
「そう……、うちのセイジュは優しくていい子だもの。みんなすぐに気づくと思ったわ。同室の方はやっと来たの? 挨拶したいんだけど」
「ああ、今風呂なんだ。また連絡するよ」
それじゃと言って通信を切った。
自分のクラス内の雰囲気はまったく問題ない。
リザベルトやラリック以外にも、友人はたくさんできた。
他のクラスのことが気がかりではあるが、そのうち飽きて構われなくなるだろうと考えた。
カタンと音がしてバスルームのドアが開いた。
タオルでゴシゴシ頭を拭きながら出てきたのはリザベルトだった。
「先に入ったぞ。セイジュも入れ」
「ああ、うん」
「明るい声の人だな。母親か?」
「そう、うち両親どっちも女性なんだ。明るいのはいいけど、お喋りだから二人揃うと耳を塞ぎたくなるくらい大騒ぎだよ」
「いいじゃないか。そんな明るい二人に育てられたから、セイジュも明るくなったんだな」
風呂に入ろうと立ち上がったところ、すれ違いざまにポンポンと頭を撫でられてしまった。
いつもは大して気にしないのに、今日はやけにドキッとしてしまった。
それは食堂での一件があったからだろうか。
転びそうになって動揺して、周りに嘲笑されて心細くなってしまった。
そんな時、力強く助け出してくれたリザベルトのことを、意識してしまう自分がいることに気がついた。
「先に寝ている」
そう言って疲れたのか、リザベルトは自分のベッドに潜り込んで布団をかぶってしまった。
俺が風呂から出てもリザベルトは変わらず布団をかぶって寝ていた。
電気を消してから、リザベルトを起こさないように静かにベッドに転がった。
目を閉じて眠ろうと思ったが色々考えてしまった。
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