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リザベルトを見ると緊張して逃げたくなる。
だけど本当に離れてしまうと胸が痛んで……
「喧嘩ってわけじゃないけど……」
「アイツ、ああいう性格だから誤解されやすいけど、根はいいやつなんだよ」
「ああいう性格?」
ラリックの言い方に少し疑問を覚えて、つい聞き返してしまった。ラリックは俺の横に付いて小声で話しかけてきた。
「……ほら、とにかく乱暴だろう。笑顔とは無縁で何も言わないし、睨みつけて威嚇するし……てっきりセイジュも恐くなったのかと……」
何を言っているのかと目を瞬かせてしまった。
ラリックの口から出てきたのは、とてもリザベルトとは思えない人の話だった。
「えっ……俺の知っているリザベルトはそんなヤツじゃ……。お喋りってわけじゃないけど、普通に喋るし、優しいし……笑顔は……あまりないけど……よく表情が変わって」
話しながらリザベルトのことを思い出して胸が苦しくなってしまった。
避けてばかりいるけど、自分はちゃんとリザベルトに向き合ってきたのかと考えさせられてしまった。
「リザベルトは誰もが知ってる家に生まれたからさ、子供の頃から注目されて、色々言ってくるヤツが多くて。そういうのが嫌で自分の殻に閉じ篭もるようになっちゃったんだよ。でも……そうか、セイジュの前ではそんな態度なんだ……。てっきり喧嘩だと思ったから、余計なことを言っちゃった。よかった、二人の友人として応援するよ」
「え? 応援って……」
ラリックはニヤニヤと笑うばかりで、応援の意味を教えてくれなかった。しかも手を握られて、勇気付けられるように頑張れと言われてしまった。
「何があったか分からないけど、避けていても解決しないよ。嫌なところはちゃんと言って話し合わないと」
そう言いながら、ラリックは持っていた紙袋の中から、ガサゴソと袋を取り出して渡してきた。
「今週から体育が始まるだろう。今みんなに体操着を配って歩いているんだ。セイジュは一番小さいサイズでいいよな。はい、これがリザベルトの分な」
クラス長としての仕事なのか、ラリックは体操着を渡してきた。リザベルトの分がかなり大きいので、俺は両手で抱えながら受け取った。
「早く仲直りしろよ。お前達が沈んでると、クラス全体が暗くなるからさ。頼むよ」
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