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そう言ったラリックは笑顔で手を振りながら次の生徒のところへ向かったようだった。
残された俺は、二人分の体操着を抱えながら小さくため息をついた。
喧嘩したわけではない。
一方的に俺が避けているだけだ。
リザベルトはそんな俺の気配を察知して、話しかけたいという顔で見てくるだけ。
「いいきっかけだな。ちゃんと話そう……」
俺はもらった体操着を渡しながら、リザベルトに最近避けていたことを謝ろうと思った。
体操着を持って、寮の部屋へ向かった。
夕食前の時間、リザベルトは部屋にいるはずだ。
俺は緊張しながら、部屋のドアを開けた。
思った通り、部屋の中にはリザベルトがいて、机に向かって本を読んでいた。
「た……ただいま」
「おかえり」
後ろ姿だが、リザベルトが本を読んでいる手がピクッと揺れたのが分かった。
何か言わないとと思い、俺はリザベルトの方へ近づいて行った。
「これ……ラリックから」
「ああ、服か。悪いな、重かっただろう」
ラリックからもらった体操着を手渡すと、リザベルトは緊張した顔で椅子から立ち上がって両手で受け取った。
「勉強……邪魔しちゃったよね。俺はこれで……」
「セイジュ! 聞いてくれ」
何とも言えない空気に、また改めようと踵を返そうとしたら、ガタンと音がして、見るとリザベルトが両手を床につけて土下座していた。
「すまない! あの時、起きていたんだろう? 俺は寝ているセイジュに酷いことを……それで、ずっと避けているんだよな? 悪い……あんな気持ち悪いことをして、俺は……最低だ」
俺の態度が変わったから、あの夜のことを気づいていたのだと分かったのだろう。リザベルトは床に頭を付けて謝ってきた。
「いっ、ちょっ、頭を上げてよ。確かに……起きていたけど……」
「ああああっやっぱりーー! なんてことだ!」
リザベルトは苦しそうな顔になって頭を抱えてしまった。俺は一緒にしゃがんでリザベルトの体を起こした。
「何も言わずに避けていたのは俺の方だよ……確かに驚いたけど、俺のこと好きって言ってくれてたもんな。それを、友人ならいいと言いつつ、俺は色々と頼っちゃったし」
「いいんだ。どんどん利用してくれて構わない。ただ……気持ちはどうしても諦められなくて、でも、もうあんなこと絶対にしないから……」
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