愛され生活はまだこれから…(後編)

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 何を言い出すんだと後退りしたら、背後にベッドがあってドンとお尻をつい座ってしまった。 「嗅がせてくれるって言ったじゃないかっっ」 「バカっ、頸の辺りかと思ったんだよ! いくら何でもこんなところだめだ」 「セイジュー」  またお決まりのうるうるした目で見られて、心臓がキュッとしてしまった。  嗅いでもいいと言った手前、頑なに断るのも悪いかと思ってしまった。 「触れないから……近くに寄るだけだ」 「あーもーぅ、分かったよ。俺の何がいいんだよ。サッパリ分からない」  いったい何をされるのか、不安になっていた俺の前に跪いたリザベルトは、本当にその場でクンクンと鼻を鳴らして匂いを嗅いできた。  俺はただ怯えていたが、リザベルトはその場から動かずに匂いだけ嗅いで満足したらしい。  スッと立ち上がったら大きめのバスタオルを持ってきて、俺の下半身にバサッと落とした。 「これ以上はやめておく」 「え……」 「そりゃもっと嗅ぎたいけど、セイジュに嫌われたくない。セイジュの匂いも好きだが、俺はセイジュが好きなんだ。明るくて可愛くて……セイジュは俺の太陽だ」 「………」  リザベルトはボソボソと喋ってはいたが、とんでもない熱烈な言葉を重ねられて、どうしたらいいのか分からなくなった。  こんなに人から好かれたことなどない。  匂いがいいって何だよって思っていたけれど、俺自身のこともちゃんと好きなんだと思ったら、腹の奥からじんわりと温かいものが上がってきた。 「無駄に生まれた家がデカいから、昔からちゃんと俺を見てくれるやつなんていなかった。初めて会った時、セイジュは俺を真っ直ぐに見てくれた。おかしいことを言っても、突き放さずに一緒に考えてくれた。友達になろうと努力したけど、好きな気持ちは消せなくて……はぁ、俺は何をやっているんだ」  リザベルトは少し離れたところで床に座り込んで頭を抱えていた。  リザベルトの好意は嬉しい。  最初は戸惑いばかりだったけど、だんだん慣れというか、リザベルトの温かさがしっくり体に染み込んで心地良くなった。  この気持ちをなんと言ったらいいのだろう…… 「ちょっと、時間がほしい。リザベルトとのこと、ちゃんと考えたい」  飛び込みたい気持ちはあるが、ほんの少し残った迷いが俺の足を掴んだ。  俺の言葉にリザベルトは分かったと言って顔を上げた。
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