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何を言い出すんだと後退りしたら、背後にベッドがあってドンとお尻をつい座ってしまった。
「嗅がせてくれるって言ったじゃないかっっ」
「バカっ、頸の辺りかと思ったんだよ! いくら何でもこんなところだめだ」
「セイジュー」
またお決まりのうるうるした目で見られて、心臓がキュッとしてしまった。
嗅いでもいいと言った手前、頑なに断るのも悪いかと思ってしまった。
「触れないから……近くに寄るだけだ」
「あーもーぅ、分かったよ。俺の何がいいんだよ。サッパリ分からない」
いったい何をされるのか、不安になっていた俺の前に跪いたリザベルトは、本当にその場でクンクンと鼻を鳴らして匂いを嗅いできた。
俺はただ怯えていたが、リザベルトはその場から動かずに匂いだけ嗅いで満足したらしい。
スッと立ち上がったら大きめのバスタオルを持ってきて、俺の下半身にバサッと落とした。
「これ以上はやめておく」
「え……」
「そりゃもっと嗅ぎたいけど、セイジュに嫌われたくない。セイジュの匂いも好きだが、俺はセイジュが好きなんだ。明るくて可愛くて……セイジュは俺の太陽だ」
「………」
リザベルトはボソボソと喋ってはいたが、とんでもない熱烈な言葉を重ねられて、どうしたらいいのか分からなくなった。
こんなに人から好かれたことなどない。
匂いがいいって何だよって思っていたけれど、俺自身のこともちゃんと好きなんだと思ったら、腹の奥からじんわりと温かいものが上がってきた。
「無駄に生まれた家がデカいから、昔からちゃんと俺を見てくれるやつなんていなかった。初めて会った時、セイジュは俺を真っ直ぐに見てくれた。おかしいことを言っても、突き放さずに一緒に考えてくれた。友達になろうと努力したけど、好きな気持ちは消せなくて……はぁ、俺は何をやっているんだ」
リザベルトは少し離れたところで床に座り込んで頭を抱えていた。
リザベルトの好意は嬉しい。
最初は戸惑いばかりだったけど、だんだん慣れというか、リザベルトの温かさがしっくり体に染み込んで心地良くなった。
この気持ちをなんと言ったらいいのだろう……
「ちょっと、時間がほしい。リザベルトとのこと、ちゃんと考えたい」
飛び込みたい気持ちはあるが、ほんの少し残った迷いが俺の足を掴んだ。
俺の言葉にリザベルトは分かったと言って顔を上げた。
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