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「あるわよ。私達にとっては何にも変えられないくらい大事よ。ベータとかは関係ないわ。曇りのない目であなたを見てくれる人がきっと見つかる。私とアリッサも学校で出会ったのよ。当時はみんな共学だったから。セイくんにも、素敵な出会いや友達との思い出を作って欲しいの」
「ミラ……アリッサ……」
何をするにもベータだからという気持ちが前に出てしまい、失敗すればベータのせいだと思って諦めてばかりいた。
そんな自分に嫌気がさしていたのは確かだった。
「もし、嫌なことがあったら、すぐに連絡して。地球の反対側にいても、ワープして駆けつけるから」
三人で抱き合って、ちょっと涙を流した。
素敵な出会いが本当にあるのか分からないが、両親が作ってくれた機会に、俺は飛び込んでみることにした。
両親は優しい。
それでも分かっていた。
世の中は厳しいということは……。
可愛いなと思った女の子には、ベータとか絶対嫌だと言われて逃げられてしまった。
それに似たことは何度もある。
アルファの人はそもそも恐くて、アリッサ以外まともに話したこともないけど、おそらくバカにされて虐められそうな予感しかない。
俺は覚悟を決めた。
どんな酷い目にあっても必ず卒業すると。
車の中でほぼ引きこもってばかりの生活だったが、両親のおかげで外へ出ていくきっかけをもらえた。
友人はできなくても、勉強を頑張って両親の期待に応えたい。
それから生活してきたキャンピングカーを降りて、ブルートーキョーに向かうワープ施設に向かった。
リング上の巨大な装置に入ることで、空間を自由に移動できる。
移動する度に時間の流れがどうとか、そういう話は俺には理解不能だが、今から百年ほど前に、やはりアルファの研究者達が完成させた。
他の星から採掘したナントカっていう鉱石のチカラが働いているらしいが、平凡な頭の俺にはサッパリ分からない。
移動は大都市間で、同じ装置が置かれている所が限定なので、誰もが好きな所に行けるわけではない。
もちろん、ワープのチケットは高額で庶民の俺は手に入れたことすらないが、なんと国立学校の生徒は無料で好きなだけ使えるという特権がもらえた。
そのおかげで難なくワープを利用してブルートーキョーに降り立った俺は、早速国立学校へ向かった。
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