54人が本棚に入れています
本棚に追加
朝の駐車場に、わたしたち三人の楽し気な笑い声が響いた。
「あぁそうだ、美佐江。今日も残業で遅くなるから、晩御飯はいらないよ」
「そうなの。わかりました。遅くまでご苦労様です」
「先に、寝ていて構わないからね」
「ええ、そうさせていただくわ。――じゃあ、田村さん、今日も主人をよろしくね」
「はい、畏まりました」
真っ赤な唇を微笑ませ、田村さんは恭しくお辞儀をしてくれた。
わたしは自転車に跨ると、二人に手を振って駐車場を出た。
自転車を漕ぐと、汗をかいた体に風があたって心地いい。
さぁーて。帰ったら、今度こそお楽しみタイムだわ!
わたしはちらりと背後を見た。
もうわたしには見えないと思った夫と田村さんが、熱く見つめ合っているのが目に入った。
あなたはわたしが何も知らないと思っているでしょうけど。
わたしは前に向き直って、爽やかな朝の風を吸い込んだ。
働き方改革だか改善だかで、水曜はノー残業デーになったことは知っているの☆
これでも、あなたの会社の親会社の会長の孫娘ですから。いろいろと、伝手はあるのよ?
最初のコメントを投稿しよう!