わたしとあなたのおいかけっこ

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 水曜日の朝のこと。 「行ってくるよ」 「行ってらっしゃい」  チュッ、と夫のほっぺにキスをする。  ほのかにメンズのオードトワレの香り。  夫は嬉しそうに笑って、軽く手を上げて玄関を出て行った。  ダンヒルのスーツが似合い過ぎててクラクラする。背が高くて、すらっとしてて、大きい会社で出世して偉い人。もちろん、顔もかっこいい。  あー、早く帰ってこないかなって、別れた1秒後に、もう思っちゃう。  わたしはスキップでリビングに戻り、いそいそとピンクのノートパソコンをダイニングテーブルに移動する。  ぱかっと蓋を開いて電源を入れ、さーて、今日もお楽しみタイム!  ――なんだけど、わたしの目がキッチンのカウンターにくぎ付けになった。  ギンガムチェック柄のナプキンに包まれた……できたてほやほやの……。  うそっ! お、お弁当……忘れていってる!  あーん、もう! よりによって、今日はすっごく頑張って作ったメニューなのにぃ!  でもでも待って、まだ間に合うかも。  わたしはお弁当を手に取ると、急いで玄関に走った。  サンダルを履いて、北欧から取り寄せたこだわりのドアを開く。  ガレージに向かった……けど、一歩遅かった。
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