n回目の恋

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―結、はじめまして、本当に久しぶり、そして、今度こそは― 「結、来週、江の島行かない?なんか海見たくなって、付き合ってくれると嬉しいんだけど」 「奏斗の誘いは、いつも急だね~、いいよ、水族館も行きたい!」 毛先だけが緩やかに外にはねているミディアムボムの髪が、 教室に差し込む陽の光に当たって、茶色に見える。 そのふんわりとした髪と、笑った時にチラリと覗く八重歯が好きだ。 今度こそ、上手くいくだろうか…。 結に告白するのも、もう何回目になるだろう。途中までは数えていたが、 繰り返される時間にも慣れてきた頃、気が狂いそうになって数えるのをやめた。結を好きになったのは自然なことだった。特に何か明確なきっかけがあったわけではなく、友達として一緒に過ごす時間が増えるうちに、気づいたら好きになっていた。だからこそ、この関係が、「好き」という思いを伝える。 ただそれだけで、崩れてしまうのが怖かった。振られるのが怖いという自分の弱さこそが、タイムリープの原因だろうと分かっていながらも、未だにタイムリープが続いているあたり、その弱さを捨てきれてないのだと思う。 そんな何度考えても答えの出ない問いを考え続けている間に、 退屈な日々はあっという間に過ぎ、気づけばデートの日を迎えていた。 「おぉ~!」 ゆらゆらと水中を優雅に舞う透き通ったクラゲの、どこか神秘的な姿に、見惚れる彼女の後姿を見ていると、もし、タイムリープがなかったら…と失うのが怖くなる。 ダメだ、また繰り返しになる。と感じた時、言わずには居られなかった。 「結、好きだよ」 教室内の喧騒で目が覚める。 ひんやりとした机の感触と、独特な木の匂いを感じる。 また、ここだ。入学式終わり1-Aの教室、クラスメイトの自己紹介の途中。 「村瀬結です。部活は、バトミントンに入る予定です。よろしくお願いします」 見慣れたはずの、教室に差し込む陽の光に当たって茶色に見えるミディアムボブの髪と口元から覗く八重歯に、思わず、目を奪われる。 「結、ごめん」誰にも聞こえない声で小さく呟く。 水族館で何気なくクラゲを眺めていた時に、いきなり告白されたときは、流石に少しドキッとした。でも、まだトキメキが足りない。奏斗のことは好きだ。だからこそ、一生想い出に残るような形で恋人になりたいと思う。 だから、私は時間を巻き戻す。 「また会えたね、奏斗、今度こそ、私のこと、最高にドキドキさせてよ。 もう、何回目?」 ―奏斗、はじめまして、本当に久しぶり、そして、今度こそは―
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