バカな生き物

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 【プロローグ】  青い空。白い雲。川から聞こえる水の音。子どもたちの遊び声。街灯の明かり。オケラの鳴き声。何も変わらない日常。  これら全てに飽きた。  「つまらない。」  この世界というのは普通でありふれている。  そしてとても冷たい。  人はイヤフォンやヘッドフォンを着け、排他的になる。自分だけの世界。他に誰もいない世界。  そんな世界を社会は当たり前とみなす。少し前の社会ではそのような人間を人々は「冷たい人」と言ってきた。  何もしゃべらない。外界との関係を遮断しているから。父親、母親、祖父、祖母。叔父。叔母。兄や姉。妹、弟。そういう感じの人から。  しかし、今は逆に排他的になっていない。「冷たくない人」が「おかしな人」になりつつある。  日本人は少数派を叩く。  これはまさに何も変わらない日常の風景と同じ。  日本人は何も変わらない。成長しない。バカばかりだ。そして、そんな私もバカの一員だ。  正解とは。不正解とは。そんなことを考え出すときりがない。  数学や化学。学校教育で学ぶ教科がどれほど楽なのかが分かる。  夕焼けと電柱。霧の中から現れる軽トラ。誰もいない早朝の牛舎。  友達と並んで食べたフライドポテト。  自分にとって世界とは何なのか。自分はこの世界の何者なのか。自分を取り巻く環境は実は自分を中心に回っているのではなく所詮クラスという名の銀河の中の一つの惑星系なのではないのか。天動説。地動説。そんなことが頭によぎる。  自分はもしかしたらおかしい人なのかもしれない。  イヤフォンがどうとか。社会が冷たいとか。正直こと高校生の自分が考えたところで何も変わらない。  そして、日々の日常も。  朝ごはんを食べ。学校へ行き。授業を受け。帰宅し寝る。  何ら変わらない日常。これと言って特別なことが起こる予兆の無い退屈な日常。  誰も期待していない日常。  夕焼けの当たった電柱のように。颯爽と通り過ぎる軽トラのように。風で簡単に吹き飛ばされる牛舎の餌のように。時間が経てば味の落ちるフライドポテトのように。自分は簡単に変わりやすくて、流されやすい。単純な生き物。  「バカな生き物」
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