20 捻じ曲がった思い

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20 捻じ曲がった思い

side天羽萬里 琴宮がさっさと帰って行った後、俺は武人とか言う男と2人きりになった。 以前に琴宮が手を握ってくれた時、確かに彼女は"たけと"と言った。 何故か、頭に血が上ったのを覚えている。 その武人とか言う男と睨み合い、そいつは先に口を開いた。 「あまり、彼女に嫌がらせするのは止めていただけますか?」 「お前、俺がホテル王の天羽萬里だと知ってるのか?」 俺は言った。 最悪お前などクビに出来る。 そう心の中で付け加えた。 「知ってますが、それがどうかしたんですか?」 その男は強気に言い返してきた。 「お前は俺に雇われてる身だろ。 それをちゃんと分かってるのか、聞いてるんだが。」 「ふん。 失礼ですが、再就職先には全く困っていませんので。」 武人とか言う男は、俺の言葉を鼻で笑い、そう言った。 カチンときた。 いや、琴宮がコイツを好きだと思うと、ハラワタが煮え繰り返りそうだった。 「まぁ、再就職先には困らないとしても… しょせんは、使う側と使われる側だってことだ。」 「天羽、あんた最低だな。 琴宮がそれを聞いたら、どう思うと思います?」 減らず口を叩くソイツにさらにイラッとした。 しかし、俺に仕事の電話がかかり、そいつも来栖(くるす)とか言うコンシェルジュに呼ばれ、俺たちは決着が付かぬまま別れた。 何故だ。 なぜ、こんなにもイライラするのか? 琴宮が誰を好きだろうと、俺には関係ないじゃないか? だが、アイツの指が琴宮に触れ、彼女の髪を撫でるところを想像すると、俺はイラつきが頂点に達しそうだった。 アイツと琴宮がどんな関係かはわからない。 だが、俺はその時琴宮の全てを奪いたい、とそう思ってしまった。 そうだ、俺に手に入らないものは無いんだ…! 奪ってやる…! その時は琴宮に対する心の底の思いなど、全く気づいていなかったのだ。 ただ、自分のお気に入りのおもちゃを取られた時のように、お気に入りの琴宮を俺が独占してやろう、と、そう思ったのだ。 手に入れる、心も身体も… 俺は相変わらず捻じ曲がった考えを捨てきれなかった。 幼少期の事があってから、人を金で買うようになっていた。 だから、琴宮も金で買えると思ってしまった。 彼女を手に入れるために必要な物は何だろう? 彼女を手に入れるために必要な金は幾らだろう? 後で振り返れば、アホだと思うが、その時の俺は純粋にそう考えていた。 それに、金で手に入らなかった物は今までになかった。 実際には、本当の笑顔と愛情だけは手に入らなかったのに… そんな事すら俺は理解していないアホだったんだ。
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