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22 お昼ご飯は
そんな事があったものの、それからは天羽オーナーはホテルの会議に無事出席したらしかった。
時刻は正午。
私がお昼休憩を取ろうかと、そう思った時…
仕事用の携帯電話に天羽オーナーから電話がかかってきた。
つい、しかめっつらをしてしまう私。
「はい、コンシェルジュ琴宮です。」
『あぁ、琴宮、愛月市内のミューズっていうレストランに予約入れてくれない?
2人分ね。』
天羽オーナーは言う。
「かしこまりました。
すぐに。」
私はテキパキと答える。
『その2人分って、俺と琴宮の事だから。
付き合えよ、昼飯。』
「は、はぁ…」
嫌だ、と言いたい。
でも…
そう、これは試練だ…
ま、ま、負けないわよっ!
「かしこまりました。
お供させていただきます。」
私は礼儀正しくそう言って電話を切った。
すぐにミューズに天羽オーナーの名前で予約した。
まぁ、いいか。
ミューズは美味しいって評判だし。
私も高いから一度しか行った事がない。
今後のコンシェルジュとしての勉強にもなるし、行っておいて損は無いだろう。
私はついでにリムジンも呼んでおいた。
そして、天羽オーナーに準備が出来た事を伝えに向かった。
「天羽オーナー、お車もご準備しておりますが。」
「あぁ、仕事が早いな。
…琴宮、どうでも良いけど、お前その格好でレストランに来るわけ?」
天羽オーナーに指摘されて気付いた。
確かにコンシェルジュの制服でお供するのは、あまりに申し訳ない。
ワイシャツにスカートだけど、着替えるか…
「これ、用意したんだよ。
多分サイズ合ってると思うから。
これに着替えてきてくれ。」
それは、花柄のドレッシーなタイトワンピースだった。
多分、10万くらいのお値段はするだろう。
「いえ、でも…
タグを切ると返品も出来ませんし…」
「プレゼントだよ、琴宮に。」
天羽オーナーは言う。
「いえ、そんな高価なものいただく理由が…」
「いいから!
俺がお前にやるっつってんだから、グダグダ言わずに着替えろ。」
そう言われて、私は仕方なく洗面室で鍵をかけて着替えた。
うん、サイズピッタリだ。
あの、エロ魔人め。
しかし、素敵だけど、身体のラインを強調しすぎなような…?
こんなものかな?
私は髪も下ろして、天羽オーナーの元に戻った。
「あぁ、似合うな。
それで良い。」
そうして、天羽オーナーは私を優雅にエスコートして、ミューズに到着した。
腕を差し出され、私はその腕を軽く掴んだ。
うーん、こうしてると完璧な王子様って感じではあるけれど…
その王子は仮面で、実はオオカミだったり。
お酒は飲まないようにしなくちゃ!
私はとにかく警戒した。
そして、ミューズに入ると、1番奥の個室に通された。
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