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29 カフェで恋バナ
「ごめんね、待ったー?」
裕子が席に着きながら言う。
「ううん、ついさっき来たところよ。」
私は答える。
「うーんと、今日ちょっと肌寒いわね。
ホットミルクティーにするわ。」
裕子は注文をした。
「でぇ?
アンタから連絡があるなんて、珍しいじゃない?
何かあったんでしょ?」
裕子は鋭い。
私は天羽オーナーと武人の件を相談した。
「やだ、そんなイケメン天国があるの!?」
裕子は言う。
「イケメン天国!?
そんな良いもんじゃ無いでしょ!
武人はともかく、天羽オーナーなんてセクハラ男よ!?」
「あらぁ、そーんな良い男ならセクハラ受けても良いじゃなぁい?
しかもホテル王なんて、上手く行けば玉の輿よぉ!?」
裕子が前のめりになって言う。
「いや、そんな事、私は…」
「じゃ、コンシェルジュの久遠さんにすれば良いじゃ無い?」
「適当に言わないでよねー。」
私はほとほと呆れてしまう。
裕子はカッコよくて金があれば誰でもいいのか?
「じゃあ、こう考えてみたら?」
裕子がニヤリと笑って言った。
「天羽さんにバックハグされた時と、久遠さんに後ろから抱きしめられた時、どっちがキュンとした?」
裕子が尋ねた。
「えぇ?
そんな質問馬鹿馬鹿しいわよ!
大体後ろから抱きしめるなんて、ズルいじゃない。
2人とも私の気持ちなんて考えて無いんだわ!」
私はそう言って、ホットコーヒーを飲み干した。
「うーん…
アンタさぁ、そんなんだから彼氏7年も居ないのよ?」
裕子が呆れ気味に言う。
「悪魔と一緒の事言わないでよ…」
私はゲンナリする。
「は?
悪魔???」
裕子が怪訝そうに言う。
「いや、それは置いておいて!
とにかく!
私は今は恋人よりも仕事なの!」
私はそう結論付け、後は取り留めもない会話をして渋谷のカフェを後にした。
帰りのバスでプライベート用の携帯を見ると、武人からLINEが入っていた。
『昨日はごめん。
だけど、アレが俺の本当の気持ちなんだ。
少しずつで良いから、俺の事男として見て欲しい。
でも、ホテルでは今まで通りに接してくれたら嬉しい。
どっちがチーフコンシェルジュに先になるか。
頑張ろうぜ。
返信は不要です。』
とあった。
私は返事をせずにLINEの画面を閉じ、深いため息をついた。
でも、武人が私を気遣ってくれているのはとても伝わってきた。
(悪魔)付き合うって言っちゃいなさいよ!顔もカッコよくて仕事も出来て、文句無いでしょ?7年間の彼氏無しが贅沢よ!
(天使)よく考えて。恋人になって、本当に武人さんを愛せる自信があるの?中途半端な態度は失礼よ。
悪魔と天使め!
そんな事言われなくても分かってるわよ!
私は悪魔と天使をかき消して家路に着いた。
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