30 普通のご要望?

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30 普通のご要望?

そうして、あっという間に休日は終わり、またコンシェルジュ琴宮に戻っていった。 ホテルのコンシェルジュルームで天羽オーナーの1日の予定を確認する。 今日は特に予定は無いようだ。 と、思っていたら、携帯に天羽オーナーからLINEが来た。 『すぐ来い。』 そして、悪魔のスタンプが押してある。 おぉ、悪魔本家! とか、馬鹿なことを考えながらも、オープンロイヤルスイートに直行した。 「琴宮、1分23秒も待ったぞ。」 ソファに座り、偉そうにふんぞりかえりながら、天羽オーナーは言った。 「このホテルにワープシステムはございません。」 私はピシリと言い返した。 「ふん、偉そうに。」 偉そうなのはソッチでしょ! とか、思うが、ケンカになるので心の中で言う。 「まぁ、いい。 今日は観光地に案内してほしいんだ。」 天羽オーナー。 「観光地、でございますか?」 私はあまりに普通のご要望に肩透かしを食らった。 「あぁ、俺は壊れたCDプレイヤーじゃ無いんだ。 一度で理解してくれ。」 上から目線で言う天羽オーナーにカチンときながらも、私はコンシェルジュとして答えた。 「それでしたら、愛月温泉がございますが… 疲労回復の効果が高い温泉が湧いている事で有名です。 お土産ストリートも栄えていますし。 人力車もあるそうですよ。」 「よし、そこに行こう。」 「かしこまりました。 では、お車の手配を。 いってらっしゃいませ。」 私は一礼する。 「何言ってるんだ? 琴宮、お前も来いよ。」 「は? しかし…」 「俺だけだと、お土産街で迷子になるだろ。 案内もコンシェルジュの重要な役割だろう?」 天羽オーナーが正論を言う。 それはそうだが… しかし… 天羽オーナーと温泉… 危険な香りしかしない気がするが… 「早く車を手配しろ。 で、お前は私服に着替えて来い。」 相変わらずの命令口調の天羽オーナー。 「分かりました…」 私は深いため息と共にそう答えた。 私は着替えて、ホテルロビーに出た。 もうすでにリムジンはホテルエントランスにつけている。 私は色々な意味で観念してリムジンに乗った。 天羽オーナーはすでに乗っていた。 「出せ。」 天羽オーナーが運転手に伝えると、車はゆっくりと走り出した。 「だけど、どうして急に観光地巡りなんです?」 「これは、デートだ。 お前、ほんっっっとうに、鈍いな。」 「モテ男のデートテクニック!に載ってました? その上からのセリフ?」 私は天羽オーナーの上から発言に対して嫌味を言う。 「な、な、なっ!? 何でそれを!?」 「あれだけ堂々とソファに置いてあれば、嫌でも目に入ります。」 「あれは… 忘れ物だ!!!」 誰のだよ! と、ツッコミたかったけど、めんどくさい事になりそうなのでやめておいた。
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