32 今回もセクハラ

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32 今回もセクハラ

「琴宮、浴衣が少し着崩れてるぞ?」 天羽オーナーから指摘され、私は浴衣を見下ろした。 「本当だわ! えーと、着付け室に…!」 そう言った時、私は天羽オーナーに後ろから手を回されていた。 「な、な、何をしてっ!?」 「まぁまぁ、俺に任せろよ。 直してやるからさ。」 天羽オーナーが浴衣の襟をなぞりながら、言う。 「はぁ!? 着付けの心得あるんですか…!?」 そう言った時、天羽オーナーの手はすでに襟の中に差し込まれていた。 「キャァァァ! やめてくださいっ!」 「黙ってろって! この襟を直せばいいんだろ? お前…結構胸あるよな…」 「嫌ぁぁぁぁ! この、変態っっっ!」 私は天羽オーナーの腕の中から逃れようとするが、ガッチリとホールドされていて不可能だ。 完天羽オーナーは浴衣を直すことより、完全に胸を揉んでいる。 その時…! 「失礼致します。 女将の美子(よしこ)でございます。」 そう、襖の向こうから声がして、「チッ」と舌打ちして天羽オーナーは私から離れた。 「ど、ど、どうぞ。」 私は襟元を直して言う。 「失礼致します。 この度は天羽財閥の天羽萬里様がお見えとかで、ご挨拶に伺いました。 この愛月温泉は100年の歴史ある温泉街でございます。 どうぞ、楽しまれていかれてくださいませ。 お食事のご用意をいたしますので、先に温泉に入られてくださいね。」 女将はそう言って部屋を出て行った。 「琴宮、足元も着崩れて…」 「も、もう、結構です!」 私は半泣きで言う。 そうして、セクハラもそこそこに、私たちは露天風呂へ向かった。 私は露天風呂に入り、手足を伸ばす。 はぁ… 極楽だわ… 温泉は無色透明で、匂いもしない。 しかし、疲労回復の効果は確かだそうだ。 5月の青空を見上げて、爽快な気分に浸った。 多少入り過ぎたか? 私は顔を赤くして部屋に戻った。 「琴宮、お前のぼせてないか…?」 呆れ気味に言う天羽オーナー。 「また、変な事するんじゃ無いでしょうね…」 「ご要望があれば…」 天羽オーナーは言う。 「ありませんっ! そんな要望は!」 その時、めまいがして天羽オーナーに倒れかかってしまった。 天羽オーナーは瞬時に私を抱きとめる。 と、思うとギュッと抱きしめた。 「あ、天羽オーナー…!」 「しばらくこのままで… 琴宮… 俺は… お前が…」 何…? これってまさか告白…!? 「欲しい。」 当然のように私の平手打ちが天羽オーナーに飛んで行った。 「な、な、何でぶつんだよ!?」 「この下半身男っ! 変態っ! すけべ!」 私はポカポカと天羽オーナーを叩き続けた。 「わ、わ、分かった! 悪かったよ!」 そんなこんなで、私は不機嫌のまま、最悪の雰囲気の夕食を食べたのだった。
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