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そして、あまりにも「東野湊人」を書きすぎたせいか、ある日ついに本人に「湊人くん」と声に出して言ってしまった。
すると、
「いいよ、湊人で。そういえば酒井って、名前何だっけ?」
と、聞かれた。
そして、その時から私たちは「湊人」「つぐみ」と名前で呼び合う関係になってしまった。彼氏彼女になったみたいで、最初に「つぐみ」と呼ばれた時は、心がふわふわしてして困った。
湊人くんの病院へは、電車に乗る必要がある。乗っている間、私は貸し出す本を適当にめくった。そして面白そうだったら、湊人くんの次にこっそり借りたりしていた。
湊人くんは図書室の本を、片っぱしから読みまくっている。図書室の棚を一つ分丸々埋めてしまうんじゃないか、というくらい長いシリーズものも、もしかしたら読み終えてしまうかもしれない。その読書量は、図書クラブから何か賞状でも出して、その偉業を称えた方がよいだろうか、と話題になるくらいだった。
湊人くんの入院は、長く続いた。
季節が過ぎる。
気がつけば、いつの間にか湊人くんのリクエストが途絶えていた。
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