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「うん。そろそろ帰らなきゃ」
「そっか。いいよ、もちろん」
「ありがとう」
「……あっ、じゃあ私も。借りていいかな? 湊人くんの本」
「あっ、いいよ。面白そうだろ? その人」
「うん。設定が新しいよね」
「そうそう。うれしー、分かってくれて」
湊人くんは目を細めて笑った。
私は、あ、と思った。
そして、学校の図書室を思い出した。
図書室の隅でたくさん本の話をした、あの時。たくさん笑った。目を細めて。分かり合えたことが、うれしくて。
あの時からずいぶん時間が過ぎて、色々なことが変わっていったけれど。
私たちはずっと、私たちのままなのだと思った。
私たちはカフェを出た。
「今度はおれが返しに行くよ」
と、湊人くんは言った。
「この本」
「うん。また感想聞かせて。私も必ず返すね」
ひとつ約束を交わして、私は何だかほっとした。約束は、未来の希望だ。私たちはきっと、また会える。
湊人くんと別れて、私は駅の改札をくぐった。
振り返ると湊人くんは、まだ別れた場所にいて、もう一度手を振ってくれた。
おわり
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