図書室から

　図書室を訪れる人は、どんな人だろう。
　自習する人。待ち合わせに使う人。心ゆくまで眠りたい人。
　それから、もちろん、本が好きな人。
　私も本が好きだ。好きすぎて、図書クラブに入ったくらい。
　だから私は、本が好きな人が、好きだ。
　湊人くんのことも、そう。

「これ、読んだ？」
　本を返却する時、たまに湊人くんにそう聞かれる。
「あ、腐女子の謎解きシリーズだよね、読んだ読んだ」
「この人、今じゃベストセラー作家だけど、こんなラノベみたいなのも書くんだね」
「あ、ていうかこの人、もともとＢＬの人なんだよ。ちなみに初期のＢＬも、超おすすめ。さすがにここには置いてないけどね」
「へえ〜、さすが図書クラブ、何でも知ってんね」
「へへ。たまたまこの作家さんが好きなだけ」
　返却する時と貸し出しする時、湊人くんとこうしておしゃべりする時間が、私は好きだ。クラスではできないような、割とマニアックな本の話もできたりするから。
　湊人くんは、大体貸し出し冊数の上限いっぱいいっぱいまで本を借りる。部活もバイトもやってないし、ゲームとかにも興味がないらしい。