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揺れ動く私の気持ち。楽しい辛い好き離れたい。感情はマーブル模様なんてものではない。小さい子のお絵描きみたいにぐちゃぐちゃ。
「じゃあ、俺のお願い聞いてもらおうかな。行きたいところがあるんだ。一緒に。少し遠いけど大丈夫?」
そしてもちろん勝てるわけのない勝負に負けた私。多分、この人はそれも計算のうちだったのではないだろうかと思う。
「一緒に行く。」
私の返事が合図になり、駅に戻った。
そこから電車を1本乗り継いで着いたのは、松田くんの暮らす街だ。
駅前東口にはデパートやショッピングモールがあり、西口は居酒屋やカフェが軒を連ねる繁華街だ。彼や宮田くんの育った街は、暮らす分には不自由のない、一言で言うなら都会だ。
「駅から少し行ったら普通に住宅街だけどね。」
彼の家から駅までは歩いて15分程で、学校に行くときは自転車で駅まで通っているそうだ。
「成海は中学までは近所に住んでたんだけど、引っ越してさ、今は駅近の高層マンションで暮らしてるの。だから、一緒に学校に行くときは駅で待ち合わせ。」
確かに駅の傍に高層マンションが数軒、軒を連ねている。
「少し歩くけど、疲れてない?」
「うん。」
松田くんと並んで歩いた。夕暮れ時の街を。方角的には彼の家の方に向かっているようだった。途中で彼の卒業した中学校の前を通った。
彼が教えてくれた。ここが母校なのって。成海と真尋も同じと。
自分自身のことを隠したりもしない。この人は何を考えているの?
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