始まりのキス

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「あの頃は翔ちゃんもまだ中学生だったし、雫も気にしていなかったと思うの。でも、翔ちゃんももう高校生だもんね。もう子どもって扱いでもない。こんな贈り物をしてくれるぐらいだもの。」 そう、だからこそ今の中途半端な自分では失礼だと思うのだ。 「雫、本当に翔ちゃんのこと失ってもいいの?」 「……。」 「翔ちゃんと今の彼氏さん、どちらかともう二度と会えませんってなったら、どっちを選ぶ?」 「私は……じゅ……」 潤さんって言おうとして、言葉を詰まらせた。 翔太の雫って呼ぶ声とその時の顔が脳裏から離れない。 いくつになっても、私のことを雫って呼んで、いつでも会いに来ると思っていた。 でも、翔太がそうしていたのは、私のことが好きだったから。 最低だ私。 翔太は今までどんな気持ちで私の傍にいたのだろうか。早く大人になりたいっていつから思っていたのだろうか。 「今すぐ翔ちゃんに対する答えは出さなくてもいいと私は思っている。彼氏さん……潤さんととりあえず付き合い続けるなら、それでもいいと。」 「……。」 「ただ、雫がそう言う自分を自分で許せないって言うなら、自ずと答えは見えてくるんじゃないかしら?」 さっき、メッセージが来た時、私は翔太からだったらと心のどこかで思った。 翔太からもらったライブのチケット。 クリスマスにデートのお誘い。 どちらに行こうかななんて、ヒロインぶって悩むようなことしたくない。 そんなことではない。
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