始まりのキス

31/32
前へ
/137ページ
次へ
❇︎❇︎❇︎❇︎ クリスマスに翔太のライブには母と二人で行った。翔太は母にも手渡しでチケットを渡していた。 恵子さんには絶対来て欲しいって言って。 そして、盛り上がりを見せたらライブを終えて外に出たら、会場のすぐ傍で、私はずっと気がかりだった人に出会う。 「あら、あなた!」 先に声を上げたのは母だった。 紺色の下地にアーガイル柄を刺繍したセーターに、膝下丈のダッフルコート、栗色のマッシュボブの前髪をピンで留めている。色白の肌に褐色の丸みを帯びた瞳。 可愛い!! めちゃくちゃ可愛い!! のだが…… 「あ、こんばんは。」 声がハスキー。そんでもって、身長が翔太並みに高い。 どこからどう見ても…… 「初めまして。磯村ハルです。」 私に差し出す手も、どちらかと言うとゴツゴツしている。 「ハルちゃん!!」 「ハルちゃんだなんて、よしてくださいよ。ハルくんでお願いします。」 「男!?嘘!?だって翔太……」 いや、女の子とは言ってなかったっけ……でも…… 「お母さん、可愛いって言ったよね!?ハルちゃん、じゃなくて、ハルくんのこと!」 「えー?だって可愛いじゃない。」 「うっ……」 確かに否定できない。 「お母さん、男の子って知ってたよね?」 「もちろん。」 「どうして私に教えてくれなかったの!?私が勘違いしてるって分かってたよね?」 「それは、そっちの方が面白いかなって。」 面白いって!!信じられない!!
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加