どこにも行けない どこにも行かない

2/29
前へ
/137ページ
次へ
❇︎❇︎❇︎❇︎ 学校でいじめがなくならないのは、当たり前だと思う。「いじめをやめましょう。」って言っている教師たちが、全世界の人を愛し、誰でも受け入れるような心の広い人間ばかりではないだから。 「河辺(カワベ)さん!この課題プリント、ちょっと簡単過ぎない?」 昼休憩の終わりがけ、私、河辺紬(カワベ ツムギ)は呼び出された。私の上司でもある数学主任の山之内(ヤマノウチ)先生に。 二年前、教員の試験に晴れて合格をし、数学教師として英語の授業に特化したことを売りにしているこの高校で働くよう命じられた。 教師はブラックなんて世間では言われてるけど、本当になと思う。いや、だって残業はめちゃめちゃ多く、部活で休み潰れ、同僚は難ありの人も多い。 この山之内先生も私からしたら難ありの人。彼女と上手くやっている人もいるが、若手女性教師からしたら、数時間前に言ったことと、今言うことが違う、何とも面倒くさい人。 しかも、いちいち服やら髪やらを朝の出勤時にチェックしているようで、彼女のチェックから漏れると、小言を言われる。そのブラウスのフリル派手過ぎないとか、スカートの色が明る過ぎないかとか。 そう言うどうでもいいことに口出しされることも煩わしいので、普段は黒のパンツスーツに夏場は白やベージュ系のブラウスやTシャツ、冬場はセーターで過ごしている。 それでも母から譲り受けた指通りの滑らかな髪は切りたくなくて、腋窩の辺りまで伸ばし、髪も目立たない程度に染めて、黒いゴムで束ねている。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加