自分だけが片思い?

13/22

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
玄関で適当に「ただいま。」と言って、靴を脱ぎ捨てた。すぐに自室に籠って、ベッドの上で紙袋の中を取り出した。 紙袋と同じエメラルドグリーンの小ぶりの箱がひとつ。 開けて、ゴンと壁に頭をぶつけた。わざとだ。そうでもしないと、気が狂いそうだった。 細い銀色の鎖にリボンの形をしたネックレス。自分がいつも着ている服装に合わせやすくて、そして可愛い。 「松田くんのバカ!!バカ!」 我慢できなくて、部屋のドアにめがけて、お気に入りのぬいぐるみを投げつけたら、なんとも絶妙なタイミングで利希がドアを開けて、ぬいぐるみに激突した。 「お姉!何を暴れてるんだよ。」 「あ、暴れてないわよ。あんたこそノックぐらいしなさいよ!」 「しただろう。デート帰りで浮かれてるから聞こえなかっただけだろう。」 「浮かれてなんていない……だって…もう嫌!全部嫌!」 「なんだよ、急に。」 利希はぬいぐるを抱えて、ずかずかと中に入ってきて、私のベッドの前に座る。 「お、可愛いネックレス。お姉の趣味を分かってる男だこと。」 「うーッ……これだって前触れなんてなかったの。私ばかり振り回されて、もうしんどい。辛い。これ以上、好きになりたくない。」 この感情を持ち切れず、まさかの利希に恋の相談をしている自分がいた。 「そんなこと言うなら別れたら?」 能天気な声で、スマホを触りながら、利希が即答する。 「はぁ?」 「そうやって優しくされるのが嫌なら別れるしかないじゃん。だってそいつ、本能的にそう言うことしちゃうっぽいし。」 「別れたら……どうなるの?」 「最初は辛いけど、お姉の気持ちは楽になる。これ以上、自分だけ好きを続けなくていい。好きなやつなんて、これから先、いくらでも出来るって。そいつ以上のハイスペックが出てくるかもしれないし。」 楽になる?本当に? 仮彼女を卒業して、前の暮らしに戻ったらいいって言うの?
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加