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朝起きて、制服に袖を通して、気合を入れるために
自分の頬を2回叩く。
そんなに辛いなら別れてしまえばいい。
利希の言う通りかもしれない。
朝ご飯を食べるため、自室から出ようとしたら、机の上に置いてあったエメラルドグリーンの箱と目が合う。
「……。」
机に歩み寄り、箱を開けて中身を出し、鎖を外して首にかける。
カッターシャツの制服なら、近付きさえされなければ、先生には見つからない。
……やっぱり可愛い……
辛いのに嬉しい。
別れた方がいいって気がしているのに、彼からもらった物を大切にしてしまう。
矛盾。
「お姉、朝ご飯食べろって母さんが言っている。」
今日はドア越しから利希が声をかけてくる。着替えていたらと思って気遣ったのだろう。
「今、行く。」
朝ご飯の前にメッセージアプリを開けて、[おはよう]とスタンプ付きで返す。
15分前に松田くんから[おはよう]と連絡が来ていた。
既読にはならない。
彼はもう学校に着いて、サッカー部の朝練をしている。
上手いだけでなく、サッカー大好きなのだ。
噂では、高校進学の時にサッカーで名を馳せる私学からお誘いの声もあったそうだ。でも、プロになる気はないし、サッカー以外のことでも高校生活を楽しみたいと断ったようだ。
だから、今がある。
私は松田くんに会えた。
こんなに好きになる人はもういないかもしれない。でも、一緒にいればいるほど逃げたくなる。
矛盾だ。
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