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好きな人と同じクラスっていうのは、天国と地獄の繰り返しだと思う。
「舞香、おはよう。」
始業のチャイムギリギリに、朝練を終えた松田くんが佐伯くんと一緒に教室に入ってくる。朝練で一汗かいてスッキリしました的な爽やかな笑顔で、おはようと私に挨拶をしてくれる。
私が廊下側の一番前の席とかなら、通りすがりだからって思えるのに、窓際の一番前なのに、わざわざ寄って挨拶するのだ。
挨拶を返したら、じっと見つめられる。
「な、何?」
思わず襟を指で触って、首元を隠してしまう。もらった物を早速付けてくるなんて、どれだけ嬉しいのって思われるのも面映い。
「別に。」
わしゃわしゃと頭を撫でられて、自分の席に行ってしまう。廊下側の一番後ろ。私とは対角の席に。
「いいなぁー。朝からラブラブ。」
後ろの席からそんな声が飛んでくる。
彼と関係を持った時から覚悟はしていた。
妬み。僻み。恨み。
それが付き纏うことも。
クラスの女の子にはほぼ受け入れてもらえている。それもこれも松田くんの性格のためだ。
彼女がいようがいなかろうが、クラスの子への態度は変えない。
だからこそ、時々、そうやって「いいなー。」って言われる。
でも、そんな声を知っていても、松田くんは私への扱いも変えたりしない。みんなの前でも舞香って呼ぶ。今日みたいに朝は挨拶してくれる。昼休みも桜ちゃんとお昼を食べていたら、時々、宮田くんと尋ねてきて、お菓子をくれたりする。
この間は、「舞香のお弁当美味しそう。唐揚げちょうだい。」って言うから、お弁当の蓋にのせて渡そうとしたら、「あっ」って言って、口を開けるから食べさせてあげざる終えなかった。
そして一言「ごちそーさま。」だって。私だけドキドキしっぱなし。隣で宮田くんなんて、全然気にしてないの。俺もそう言うことするしって顔。
この人たち、無意識で女誑しなんだよ、絶対。
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