自分だけが片思い?

15/22

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
好きな人と同じクラスっていうのは、天国と地獄の繰り返しだと思う。 「舞香、おはよう。」 始業のチャイムギリギリに、朝練を終えた松田くんが佐伯くんと一緒に教室に入ってくる。朝練で一汗かいてスッキリしました的な爽やかな笑顔で、おはようと私に挨拶をしてくれる。 私が廊下側の一番前の席とかなら、通りすがりだからって思えるのに、窓際の一番前なのに、わざわざ寄って挨拶するのだ。 挨拶を返したら、じっと見つめられる。 「な、何?」 思わず襟を指で触って、首元を隠してしまう。もらった物を早速付けてくるなんて、どれだけ嬉しいのって思われるのも面映い。 「別に。」 わしゃわしゃと頭を撫でられて、自分の席に行ってしまう。廊下側の一番後ろ。私とは対角の席に。 「いいなぁー。朝からラブラブ。」 後ろの席からそんな声が飛んでくる。 彼と関係を持った時から覚悟はしていた。 妬み。僻み。恨み。 それが付き纏うことも。 クラスの女の子にはほぼ受け入れてもらえている。それもこれも松田くんの性格のためだ。 彼女がいようがいなかろうが、クラスの子への態度は変えない。 だからこそ、時々、そうやって「いいなー。」って言われる。 でも、そんな声を知っていても、松田くんは私への扱いも変えたりしない。みんなの前でも舞香って呼ぶ。今日みたいに朝は挨拶してくれる。昼休みも桜ちゃんとお昼を食べていたら、時々、宮田くんと尋ねてきて、お菓子をくれたりする。 この間は、「舞香のお弁当美味しそう。唐揚げちょうだい。」って言うから、お弁当の蓋にのせて渡そうとしたら、「あっ」って言って、口を開けるから食べさせてあげざる終えなかった。 そして一言「ごちそーさま。」だって。私だけドキドキしっぱなし。隣で宮田くんなんて、全然気にしてないの。俺もそう言うことするしって顔。 この人たち、無意識で女誑しなんだよ、絶対。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加