自分だけが片思い?

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❇︎❇︎❇︎❇︎ 見ているだけで幸せだった。それに今の自分が誰かと付き合えることがあるなんて思えなかった。 松田くんの存在を意識するようになったのは、1年生の夏。もちろん、友だちの宮田くんも然り、目立つ人だったから、名前と顔はもう少し前から知っていた。 1年生の時に親しくしている友だちが美術部に所属していて、毎週火曜日は部活があって、少なくても1時間は部室にこもって絵を描いていた。でも、帰りは一緒に帰りたいねってお互いに話していて、部活がオフの私はいつも図書室の窓際の席で課題や予習をしていた。そこからはグラウンドがよく見えた。 松田くんはいつもサッカー部の練習に参加していた。もちろん、それぐらいなら意識するようになるわけがない。彼の存在が私の中に焼きつくようになったのは、サッカーする時の顔が誰よりも楽しそうだったから。それから、部活の後に友だちとボール遊びや水の掛け合いをしている時の笑顔がすごく可愛かったから。男子高校生に可愛いなんて失礼?と思うけど、それ以外の言葉が見つからない。それぐらい素敵な顔で笑うのだ。 そんな彼を気付いたら課題の合間に目で追うようになってしまった。そして、目で追いながら、心臓のあたりがきゅっとするのは言うまでもなかった。 サッカーのルールは分からないけど、上手いのは素人でも気付けた。先輩にも頼られているし、ボール捌きも無駄がない。そんな彼の周りにはいつも人がいて、そして、彼は誰にでも優しくて平等。それでも宮田くんといる時がやはり一番落ち着くのか、二人で話をしている姿などは、本当に絵になりそうだった。同じ学年の女の子たちが「二人が一緒にいるところを見れて、癒された。」と話しているのも理解できる。 でも、松田くんは時々、どことなく表情を曇らせる時がある。誰にも気付かれないぐらい一瞬。あの顔の意味は何なのだろうか。 そんな見ているだけの片思い。進展なんてあるわけがないけど、2年生は同じクラスぐらいにはなりたいって思っていた。それで十分だって。
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