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唇が離れてから、私は自ら松田くんの胸に顔を埋めた。もうダメ。顔が赤過ぎて、見せられない。こんなの反則。
「顔上げて、舞香」
後ろ髪をすく彼の指。
「やだ。絶対無理!」
「じゃあ、そのまま聞いて。」
「……。」
「別れたいって言われても別れないから。」
「……なんで……」
「好きだから。私ばかりじゃないよ。多分、今は俺の方が舞香のことを好き。」
「私の方が好きだもん!」
反射的に顔を上げていた。目が合った松田くんは今まで見てきた中で、一番穏やかな表情をしていた。
「さっきも、茅野に啖呵切っただろう。舞香のそういう考えに俺はずっと救われている。」
「私でも……少しは松田くんの役に立つ?」
「うん。てか、役に立たなくていいよ。こうやって一緒にいられたらそれでいい。」
もう一回、軽く唇が触れて離れた瞬間、「もう、本当に勘弁して。」と背後で声がした。
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