82人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
❇︎❇︎❇︎❇︎
あらゆる会社から不採用をもらった。でも、就職しないわけにもいかなかった。家族がそんなこと納得するわけがなかったから。
それなりの大学に籍を置いていた。学校をサボることは4年間一度もなかったが、授業の質問やグループワーク以外で話しができる人は4年間一人もいなかった。
コミュニケーション能力が壊滅的なのだ。
人が苦手だ。
何を話したらいいかいつも分からなくなる。
一人で好きなことをしている方が気楽なことに気付いたのは、高校生になった時。
物静かな両親に育てられたこともあり、私も口数の少ない人間だった。
家ではそれで事足りたのだ。家族3人、それぞれが自分の好きなことをして暮らす。別に仲が悪いわけではない。それで、全員が満足していたのだ。
両親は父は有名ホテルの中にある日本料理屋の料理人、母は得意の裁縫を活かして、ネットで洋服や鞄を販売していた。黙々と好きなことをして生計を立てる。
技術に守られ、人とのコミュニケーションは必要最低限で良かったのだ。
でも、私にはそのような才能は見つけられなかった。
だから、企業にきちんと就職しなければならなかった。
最初のコメントを投稿しよう!