同じ匂い

6/27

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
❇︎❇︎❇︎❇︎ 「では、みなさん、グラスを持ちましたか?カンパーイ!!」 50人程の人が集まった宴会座敷に、乾杯の声が響き渡る。 5月も半ば。ここ最近の異様な暑さのせいか、男性社員のビールの飲むスピードも速い。 今日は新人歓迎会である。 断ろうとした。誘われたその瞬間に。 でも、たまたま近くにいた社長と目が合い、その目が「新入社員のくせに断ったら許さん!」と言うビームを放っていて、頷くしかなかったのだ。 今年の新人と言うか、新しいメンバーは私以外に中途採用で採用されたトラック運転手さんが2名とパートさんが3名。司会をする副社長の紹介を受けて、私たちは自分が座っている場所で立って一礼をした。 それさえ終われば、後はもう用無しだ。 なるべく人との関わりを避けたいので、座席も一番端を選んだ。隣は50代後半の男性社員。いつもは寡黙な方だが、お酒を飲んでいることもあり、今日は上機嫌に隣の男性社員とプロ野球の話をしている。 よしよし、良い感じ。 正面に座っていたパートさんは、乾杯が終わるとそそくさと自分と親しい人のところへ行ってしまった。 テーブルにはこの辺りの座席の人用の刺身や揚げ物、サラダが並んでいる。 男性社員はお酒と枝豆で十分満足しているし、パートさんはもう帰ってこないだろうし、ここにあるご馳走は私の食べ放題!! 食べるのが好きなのだ。休みの日は一人で食べ歩きをするのが楽しみなぐらいに。 最初は刺身かな。それから次は唐揚げで……
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加