同じ匂い

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「新内さーん、お腹空いた。」 食費を浮かせるためにも一人で食べまくってやると思っていてのに。 なぜここに座る? 私の反対側の隣。 この飲み会でパートさんたちが隣に来て欲しい人、ナンバーワンの男がどうして私の隣に来るのだ? 「ま、間宮くん、君の席はここじゃないよ?」 最初の席は、私からは見えないぐらいの位置、社長の近くだったではないか。 「あの席、飽きちゃった。俺、飲まないし。」 そう、彼は未成年。社長は間宮くんに飲ましたやつは絶対許さないと言っている。会社の信用問題にも関わるからクビにすると。 そして、間宮くんも「俺、自分の将来を守りたいので飲みません。」とはっきり言っている。 ちなみにこう言うところもパートさんたちからは、ポイントが高い。 「新内さん、刺身食べたい。」 「……。」 こう言う時、スルーできない自分がいる。 未使用の取り皿に刺身を何切れかのせて、彼に渡してあげる。 「醤油はこれどうぞ。わさびはいりますか?」 「ありがとう。わさびはいらない。」 お礼を言ったら、丁寧に手を合わせて、間宮くんは醤油を少しかけて刺身を食べる。 「刺身はやっぱりハマチだなぁ。新内さんは何派?」 「……私もハマチ派です。」 そして、一人で食べ切ってやろうと思っていたハマチを今、君に取られました。 「ねぇ……」 不思議そうな顔で間宮くんが私の顔を覗きこむ。 「新内さんってどうして俺に敬語なの?」 「間宮くんの方が1年先輩だからです。」 「俺、ただのアルバイトだよ?それに年下だし。敬語じゃなくていいのに。」 「そんな急に言われましても……」 口篭ってしまう。会話をこれ以上続けられない。何を話せばいいの?つまらないやつって思ってここから早く去ってくれないかな? なのに 「ふふっ。新内さんってやっぱり面白いね。」 お、面白い!?どこが!?今の会話に面白ろいところあった!?
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