自分だけが片思い?

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最悪。これから部活なのに忘れ物だなんて。1年生も終わろうとする3月の半ば。私は急いでいた。卒業する部活の先輩たちへの贈り物を作るために調理室に向かう途中、今日の部活で必要なエプロンを忘れていたことに気付いたのだ。慌てて踵を返し小走りで廊下の角を曲がった時だった。 ドン!! と、ぶつかった。ぶつかった反動で後ろによろめいた視界に、ぶつかった相手と辺りに転がっていくサッカーボールが4個映った。 松田くん!? 嘘!!嘘!!私、松田くんとぶつかった? 「ごめん!大丈夫!?ボール抱えてて、前見てなくて……」 散らばるボールより先に私の心配をしてくれる。 「あ、あの……」 情けないけど、突然過ぎて、緊張し過ぎて、掠れた声しか出ない。 「もしかしてどこか強く打った?」 少し前屈みになって私の顔を見つめる彼の目なんて見れるわけもなくて、ただ節目がちに首を振ることしかできない。 部活の練習着の彼。これからグラウンドに行く途中だったのだろう。 「あの、ボール……」 震える声でそれだけ言えて、散らばったボールを取ろうとしたら、緊張のあまり足がもつれて、足首のあたりを捻って、あろうことかそのまま廊下に座り込む形で転んでしまった。 「大丈夫!?」 同じように自分の目の前に座ってくれる。 「捻挫した?ちょっとごめんね。」 そう言って、彼の手が捻った足首に触れた。 「あ、あのっ!」 もう無理。心臓が止まりそう。 「腫れてはなさそうだけど、念のために保健室行く?」 「だ、大丈夫…です…」 「無理したらダメだよ。なんかあったらいつでも言ってね。俺が原因なんだし。」 ……この人…本当に優し過ぎる…… 「あ、ありがとうございます。」 「お礼なんて言われる立場じゃないよ。てか、敬語じゃなくていいし。同じ学年でしょ?」 「……どうしてそれを?」 同じ学年って知ってるの?モブキャラでしかない自分のこと。 「さぁ、何ででしょう?」 ふふっと笑いかける姿に目眩がしそうだった。 「おい!猛!早く部活に来いよ!こんなところで女といちゃついている場合かよ!てか、ボール!あーあ、もう!」 廊下全体に届く大声とともに、私と同じクラスの佐伯くんがやって来て、ボールをかき集めている。 「丈、ごめん。そろそろ行かなきゃ。ケガ、本当に大丈夫?」 「大丈夫。」 松田くんが立ち上がったので、私も同じようにゆっくりと立ち上がった。 「ほら、行くぞ、猛。」 「はーい。じゃあまたね。」 立ち去る二人の後ろ姿をただ眺めることしか出来なかった。佐伯くんが松田くんに「宮田といい、お前といい、本当に女誑しだからな。」と突っ込み、松田くんは「俺も成海も超一途よ?」となぜか疑問系で反論している後ろ姿を。
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