同じ匂い

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❇︎❇︎❇︎❇︎ それから私は週3日、間宮くんがアルバイトとして出勤する月、水、金曜日の午後の休憩時間に二人で過ごすようになった。午後だけじゃない。お昼ご飯の時間も。 家から持参したお弁当を持って、気が付いたら屋上の階段を上っていた。 彼はそこにいた。コンビニのおにぎりを地べたに座って食べていた。 「座わったら?」 前と同じように言われて、その日、私は何も聞かずに彼の横に座った。 時間を重ねるうちに、私は間宮くんに敬語で話さなくなった。コミニュケーション能力底辺の人間が、この人となら話すことができた。 バンドのメンバーの名前も知った。緑が好きだから髪が緑色だと言う、なんとも明快な理由も。彼が作った曲も聞かせてもらった。ロックと言うか音楽全般には疎いのだが、それでもメンバーがこの曲を推したのは分かった。 頭からつま先まで電気が走ったような感覚。まだ歌詞はついていないのに、自分の中にある惰性的に過ごす日々を終わらしたくなるような。 私はただ間宮くんに「ありがとう。」と言った。その意味を理解してくれたのか、彼は初めて私の前で頬を染めて俯いた。照れている姿に、人生で初めて胸がきゅっとした。喉の辺りまで込み上げてくる胸の高鳴りを感じた。 「新内さんって勉強できるよね?」 15時前の休憩時間。季節は進み、もうすぐ6月が終わろうとしていた。間宮くんは相変わらずワイドパンツを履いているが、最近はTシャツを着ている。 私も間宮くんも今日は自販機で買ったミルクティーを手にしていた。 「勉強……思い出したら少しは。」 一応、大学進学のために必死に受験勉強はした。今となっては、その知識はほぼ活かされていないが。 「お願い!俺に勉強教えて!」 「勉強!?」 「仕事の後の1時間、1週間でいいから。もうすぐ期末テストなの。通信制だって言っても、3年で卒業したいなら単位を落とすわけにはいかないの。」 間宮くんに懇願されて、断れるわけがない。 前の私なら「別の人に聞いて。」と即答したのに。 仕事の後に彼に会うことが苦痛ではないと思っている。 寧ろ、会いたいと思っている気さえする。
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