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間宮くんに連絡先も住所も教えて、仕事終わりに我が家の前で待ち合わせをした。
どこにでもある1DKの3階建ての賃貸の3階角部屋。中は5畳のキッチンと8畳の自室。自室の中央にはラグの上にセンターテーブルが置かれていて、その奥のベランダに面した窓にそってベッドを置いている。
センターテーブル正面の壁にはセンターテーブルと同じ木材のローボードがあり、そこにテレビを置き、空いているスペースに瓶に淡いピンク色の薔薇の造花が刺さった芳香剤やちょっした小物、アクセサリーをのせたガラス製の小皿を置いている。
本当にどこにでもある働く社会人の部屋。
そこに一人の男子高校生が座って、英語のワークを広げて、課題を解いている。その横で私は、尋常じゃないぐらいに、本当に自分の家にいるのかと言いたくなるぐらいに、速い胸の鼓動を抱えながら座っている。
「これは?訳したらどうなるの?」
「どれ?」
間宮くんの質問にワークを覗き込んだら、自然と腕は触れる。彼の肩のあたりに自分の顔が寄ってしまう。目線をを上げたら、視線は絶対にぶつかる。
そんなことになったら私……
「これ。」
間宮くんの手が私の手を取り、教えて欲しい問題の上に指先を当てさせる。
心臓が痛い。痛い。痛い。
誘ったのは私だ。分かっている。
こんなに距離が近くなると思わなかったのだ。うちは他にテーブルがないから仕方ないのだが、それでももう少し離れて座るとか……
できない。
体がどうかしたのかと言うぐらい熱いのに、離れるのは嫌だと思ってしまっている。
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