同じ匂い

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初日からこれで、1週間持つ自信はない。それでも、勉強の合間に間宮くんとの話をするのが楽しいのだ。 コミニュケーション能力底辺の私でも、そんな気持ちを持ち合わせていたのだと思うくらい。 「新内さんって頭いいんだね。」 「そんなことないよ。容量が悪いから、学生時代は理解するにはいつも人の倍はかかってたもん。」 受験生の時は地獄だった。志望校に受かるために、土日はほぼ毎日、塾に缶詰だった。 「そうなの?教え方上手なのに。ほら、この練習問題も新内さんのお陰で全部解けたよ。」 「それは間宮くんの理解力が高いんだよ。」 ひとつ言うと次の問題にも活かす力がある。 「そうだといいな。俺、新内さんには感謝してる。勝手なお願いを受け入れてくれてありがとうね。」 前触れもなく間宮くんの手が私の頭に触れて、撫でられた瞬間、頭の中が真っ白になって、立ち上がっていた。 「お、お腹空かない?もう19時前だもんね。私、何か作る。だから、最後の問題を解いて待ってて!」 触れられたところから、体に電気が走る。柔らかくて温かい掌。めちゃくちゃナチュラルに頭を撫でられた。こっちは異性にそんなことされるの初めてなのに。 晩ご飯に炒飯とワカメスープを作って、間宮くんとセンターテーブルに並んで座って食べた。 そこで私はまた後悔することになる。 「美味しい。新内さんの手料理を食べられるなんて幸せ。」 なんて間宮くんは言うんだもん。その顔が本心だからまたタチが悪い。 「あ、でも彼氏に怒られない?変なガキに手料理を食べさせたなんて知られたら。」 「怒るような彼氏なんていない。今まで付き合った人なんていない。」 言ってまた私は一人後悔する。彼にとってどうでもいいプライベートな情報を伝えてしまったこと。 「彼氏いたことないんだ。」 「あ!今、ちょっとバカにしたでしょ!今まで彼氏の一人もできたことないのって!」 思わず噛み付いたら、間宮くんは今度は自分の指先に私の毛先を絡ませる。  「全然。新内さんが誰のものでもなくて良かったって思ったけど。」 「なっ……」 何それ。もうやだ。やだ。やだ。てか、またナチュラルに人の髪に触れてるし。誰にも踏み込まれなかった私の中に、どんどん間宮くんが侵入してくる。 「ねぇ、スープのおかわりある?」 それなのに、こっちの胸の鼓動などお構いなしで、間宮くんは呑気に2杯目のワカメスープを飲み始めるのだ。
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