同じ匂い

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「もしかして、今から電車に乗る?」 「ううん。最寄り駅に着いたところだから大丈夫。何?何か困りごと?」 高校生の頃から全く悩みがない人生なわけではなかった。あの頃は、まだ自分が周りからどう見られているかも気になっていたから。だから、ちょっと石につまづいたら、和巳によく話を聞いてもらっていたのだ。 「……男子高校生って何を考えているの?」 「それ、俺に聞く?」 「和巳だって少し前まで男子高校生だったでしょ。」 「そうだけど、俺、ノーマルじゃないし。てか、何?そのよく分からない相談事。」 茶道の家元の後継息子である和巳は、容姿端麗で頭脳明晰。高校時代、彼のファンの子がたくさんいたが、彼は同性愛者で、そんなファンの子の気持ちに応えることはなかった。 「実はね……」 職場にいる男子高校生に1週間限定で勉強を教えていること。その子が人懐っこくて、自分の傍に寄ってくること。それがなぜか嫌ではないこと。寧ろ自分が望んでいるような気がすること。 「まだ1日なんでしょ?とりあえず1週間向き合ってから、自分の中の答えを見つけたら?」 「私は一人の時間が心地良かったのに……こんな自分、変としか思えないの。」 「一人の時間が心地良いのと、ずっと一人でいるってのは違うと思うけど。」 「……。」 「悪いことじゃないよ。誰かのことを思うことは。」
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