同じ匂い

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❇︎❇︎❇︎❇︎ 2日目。 間宮くんは約束通り18時に訪ねてきた。今日は家でも課題をしていたそうだ。バイトがお休みの日は、たいてい家で課題をしてるそうだ。 「見た目より真面目でしょ。」 冗談めかしてそんなことを言って、きちんと私の家でも期末テストの勉強をする。テストが終わったら、バンドの練習がまた始まるそうだ。 「今はみんなテスト中だからね。亜貴なんて、全教科90点以上取らないといけないから、本当に大変みたい。」 亜貴くんと言うのがギターをしていて、私でも名前を聞いたことがある進学校に通っている子だと言うことも、もう知ってしまった。 「夏休みになったらライブするから、新内さんも良かったら遊びに来て。」 可愛い笑顔で誘われて、断れず頷くと「やった。」って言って、また笑うのだ。 「完成!」 19時過ぎに彼は今日の課題を全て完成させた。 ……帰る……よね? 帰り支度を始める彼に、帰らないでなんて言えない。前回は勢いで晩ご飯を作ってしまったが、毎回そんなことをして欲しいと望んでいるとも思えないから。 「また明日もよろしくお願いします。」 荷物を詰めたリュックサックを背負って、間宮くんは玄関で私に挨拶をした。 「……あの……」 彼の前に立って固まってしまう。何を言えばいいの?分からない。待ってるねとか?また明日ねとか?本音は帰らないでほしいって思っているのに? 「新内さんってさー」 間宮くんの手が伸びて、私の頬に触れる。 頬に…触れ… 「な、な、何……?」 「別に。色白いよねって思っただけ。」 頬に触れた手をゆっくりと離して、間宮くんはいつもと変わらない顔で「じゃあね。」と言って、去って行く。 私の口から声は出なくて、金魚のように口をぱくぱくさせるだけだった。
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