同じ匂い

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和巳から前触れなくかかってきた電話を終えた私は、隣を見やる。 ベッドで眠る間宮くん。いや、礼央くん。 お互い下着姿。和巳に何もないなんて言ったらもう嘘になる。 付き合って1ヶ月後には食べられた。「いつでも会えなくなる前に、杏里さんのこと俺の体の中に残させて。」なんて言われて、断れるわけがなかった。 俺も初めてだからなんて言うわりには、私の隅々まで礼央くんは綺麗に食べ尽くした。私の体を労る言葉は忘れずに。 関係は変わっても、お互いに相手の自分の時間は大切にしている。礼央くんがバンド仲間や友だちと過ごす時間、曲を作る時間、課題をする時間。そう言う時間は今まで通りでいて欲しいって彼に言った。 そしたら、礼央くんも私に言った。杏里さんも今まで通りでいてと。 そしてもうひとつ約束した。 高校卒業するまでは、うちに泊まるのはダメと。まだ高校生の礼央くんと付き合う責任として、そこだけは線引きをした。 「杏里さん?」 礼央くんが寝返りを打って、ゆっくりと目を開けて、私を見つめる。 「起きた?」 「うん。」 手を伸ばして「おいで。」と言われる。 私は素直にその腕の中に収まってしまう。可愛い顔をしているのに、しっかりとした腕の骨格に、体付きは男なんだって思わされる。 「杏里さんといると落ち着く。」 髪に通る指。絡まるお互いの足。落ち着くのは私も同じだ。 「ご飯食べに行く?」 礼央くんの提案に部屋の壁時計を見ると、もうすぐ18時になろうとしていた。夏の太陽はまだ沈まず、燦々としている。 「行きたい。」 「何がいい?」 「礼央くんは?」 「じゃあ一緒に言ってみる?」 せーのと言って息を吸って 「お寿司!」 言った言葉はハモっていた。 「ほら、やっぱり同じ匂い。」 礼央くんが嬉しそうな顔をするので、私も同じように嬉しくなっていた。 一人よりも素敵な時間を見つけたって思っていた。
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