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自分の手首を見つめる。
手首切ったって何それ。
揺られる電車の中で座席に座り、車窓に後頭部をもたれさせる。
面倒くさい。
だけど、バンドを続けるためには、両親の命令には逆らわない方が無難だ。
こんな自分が悔しい。真尋も翔太も礼央も自分で稼いでいるのに。俺は良い成績をとって、それで親を満足させて、自由を手に入れている。
親も期待しないぐらいだったら良かったのに。物心ついた時には、自分の発想力や思考力の能力が、普通より長けていることを悟った。
そして、それは俺だけではなく自分の両親も。
若くして有名企業の役職に就く両親は、一人っ子の俺に期待を寄せた。普通の親なら当たり前だろう。
自分達と同じ日本中で知らない人がいないであろう大学を卒業して、親戚たちから「すごいわねー!」って言われる企業に就職しろと言った。
そんなことを言いながら、仕事を愛した両親は、塾に子守をお願いして俺を一人置き去りにした。
でも、そのおかげで出会えたから。
あいつらに。
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