小さな手

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学校帰りにそのまま翔太に連れ出された。朝にした約束を忘れずに笑顔で俺を誘いに来た。 下駄箱に行ったら、そこに真尋と礼央がいた。あの頃から真尋は背が高くて、無愛想で、クラスの子たちからはけっこう怖がられていた。 その一方で礼央や翔太は誰にでもフレンドリーで、よく色々な人から遊ぼうと声をかけられていた。でも、二人がつるんでいるところをあまり見たことがなかったから、この三人が一緒にいるのは、正直ちょっと不思議だったのだ。 「あ、佐々井くんじゃん。俺が声をかけようと思ってたのに。」 礼央が頬を膨らませて、翔太に対して地団駄を踏んだ。 「へへっ。俺の勝ち。」 「はいはい。ほら、行くよ。」 二人を適当にあしらいながら、真尋が歩き出したので、 「あ、あの、行くって?」 尋ねずにはいられなかった。 「おい、翔太!お前、何も説明してないの?」 「えっ?伝わってるかなって。」 「伝わるわけないだろ。」 何だ、何なのだ? 「佐々井くん、今から俺の叔父の家に行くんだけど、とりあえず家に帰った方がいいよね?お家の人が心配するだろうし。」 「……別に。帰っても誰もいないから。親とは朝しか会わない。」 帰ってくるのは俺が寝た後、夜中だ。朝起きて仕上げた課題を渡して、学校のことを少し話す。それだけだ。 「そうなの?俺らと同じだねー。」 礼央の言葉に同じってと思って、何度か瞬きした。 「俺らも家に帰っても誰もいないから。だから、真尋の叔父さんのところによくお世話になっているの。」 翔太がそれだけ言うと、雑に上靴を下駄箱に入れて、下靴を履いて歩き出したので、後を追っていた。
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