小さな手

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そして、今日が彼女と会う初日だった。しかし、彼女の家に向かう電車に乗る前に、叔母から電話があった。 俺の母には話していないのだが、色々と問題を抱えているのだと。 前情報では、学校に行けていないから、勉強を見て、話し相手になって欲しいとのことだった。 ところが、実際はそうではなく、常習的にリストカットをしていて、ほとんど人と話すことはなく、勉強どころではないらしい。最近ではご飯も食べなくなっているそうだ。 「私たちだけでは、何もできなくて。医者に連れて行こうとしたら、泣いて暴れるの。家でできることは、あらゆる手を尽くしたんだけど、何も受け入れてもらえないの。亜貴くんなら年も近いし、もしかしたら力になれないかなって。」 とのことだった。 いやいや。ただの高校一年生に何ができるというのか。 でも、ここで断ったら、俺の夏休みは塾に缶詰になる。 それだけは避けたい。 それに……そんな話を聞いて、面倒くさいと思うのに、勝手にしてとまでは思えない自分がいる。 「亜貴は自分では気付いていないけど、優しいからなぁ。俺らのことをいつも一番に考えているのは亜貴だよ。」 と翔太に言われたことがある。 優しい?自分ではピンとはこない。 ただ、誰かを踏み倒したり蔑ろにしたり落し入れたり、そう言う行為は昔から苦手だった。
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